【まふまふ】突然ですが、いつも後ろに鎌もった死神がいます。 (ページ10)

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＃１０鎌ページ10

平常心平常心平常心…

「A？お風呂あいたよ～」

だあぁぁやっぱ無理だ！！

「？顔真っ赤…」

私の買ったスウェットを着て、両手で頬が挟まれ強制的に目線を合わせられる。

『ま、まふ君何やって…』

「ふふ、可愛い」

『かっ、かわっ！？』

体温が上がるのは不可抗力だろう。ついさっき、ほんの数分前

彼に、キスされたのだ。

わ、私のファーストがぁ…

寝ていたところを起こそうとしたのが間違いだった。寝ぼけていたので本人は覚えていない。多分。やっと離してくれた頬はジンジンと熱を持つ。

「今日さ、死んだ人の魂見つけたんだ」

『…うん』

「魂って言っても死者の姿だよ？喋れるし、僕にしか見えないけど」

大きな目を細めて宙を見て話し出すまふ君に、いつもの幼さは全くなくて思わず瞬きをする。

綺麗だな…

「でね、今日は女の子だったんだ。それでその子に『君はもうこの世界にいないから、一緒に空の上へ帰ろう』って声かけたの、そしたら…」

典型的な言い方だな。

まふ君が微笑む。髪がさらさら揺れた。

ガラにもなく、
私の心臓は音を立てる。

「『ペットをおいてきたから、その子が死ぬまで待ってる』、って言ったんだ」

『…それ、から女の子は、どうなったの…？』

「何かわからないけど、僕、胸がキュウってつかまれた感じになって結局…、無理だったんだぁ。その子動こうとしなかった」

『そ、か』

〝これで、よかったのかな…″

最後に独り言のようにまふ君が呟いた言葉は、充分、聞き取れてしまった。

言った本人はあくび混じりにおやすみ、と笑ってソファへダイブ。すぐに規則正しい寝息が聞こえてくる。

死神が死者の魂をおくる試験、と彼は言っていた。
もしそれに合格したらその後自由に生活できる、という一点しか私は知らない。が、妥協も諦めも彼の、やさしさも、どれも不利な点ばかりじゃないのか。

考えていたら気分がくらくなる。

ぺたんと床に座り込んで、まふ君を起こさないようにテレビをつけても面白い番組なんてなくて。

彼用の家具はどんなのがいいか、悩みながらお風呂の準備をはじめた。