第84話 ページ35
ゆさゆさと体が揺れている感覚で目を覚ました。
少し重たい目蓋を開けば、目の前に満面の笑みでこちらを見る男の顔。
「初めて食べられた気分はどうだ？」
「…っは、は？！…え！」
ガバッと勢いよく上半身を起こせば、少し体が身震いした。
布団しかかぶっておらず、その下は見事に真っ裸。
それなのに何故…
「な、な、な…なんでルク様がここにいるんですか！あっち行ってください！」
「はっ、そんな焦らなくても俺はお前を喰わないって。心配すんなよ。」
「そ、そういう問題じゃないんです！ば、馬鹿なんですか？！」
「お、初めての暴言。最後にそれが聞けてちょっと嬉しいぞー。」
“ 最後 ”
その言葉を聞いて改めて現実を突きつけられた。
「…ルク様も、行っちゃうんですか…。」
そう呟けば、彼は少し意外そうに目を丸くした。
そして私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「俺と離れることも寂しがってくれてるとは思ってなかった。可愛いやつだなぁ。」
そう言いながらほら、と手に持っていたものを渡してくれた。
それは私の服で、きっと彼が取りに行ってくれたのだろう。
「ありがとうございます。」
「早く着替えろ。もう船が出るぞ。」
その言葉に私は急いで反応した。
ルク様が出てすぐに着替えた私は他の吸血鬼たちにウルド様のところへ連れて行ってもらう。
港？というのだろうか。
海が見えてきて、そこに見たこともない大きな船がとまっていた。
多くの吸血鬼や貴族が乗りこむ中に、私の愛しい人を見つける。
その姿を見ただけで、涙が溢れそうになった。
唇を噛みしめ、それを必死に堪える。
「ウルド様…！」
「A。体は平気か？」
「は、はいっ。」
「そうか。」
いつもと変わらない短い会話。
もうこれもしばらく出来ない。
どれくらいの時間かもわからない恐怖。
もう連れて行ってなんて言わない。
行かないでとも言わない。
最後の最後でそんなわがままを言う私の姿なんて見せたくない。
だから、泣きそうになるのを我慢し、震える声で彼に伝えた。
「待ってます。ずっと…。死ぬまで、ずっと。」
そう言えば、彼はほんの少しだけ驚いた顔をしていた。
だが、すぐにいつもの顔に戻る。
私の耳につけてあるイヤリングに触れ、次に頰に手を滑らせた。
彼が何かを言いかけて口を開いた時、別の声がした。
「ギールス様、準備が整いました。」
その言葉を聞いて、私は彼に笑顔を向けた。
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ユーリ(プロフ) - ローズさん» 読んでいただきありがとうございます！ルク様もカッコイイですよね！もし余裕があれば作成させていただきます！^ ^ (2020年4月19日 6時) (
レス) id: cebf47b228 (このIDを非表示/違反報告)
ローズ - 全部読ませていただきました。本当に楽しかったです！特にルク様がカッコよくて...もしよければルク様の小説見てみたいです^^ (2020年4月19日 5時) (レス) id: 9c4c55a475 (このIDを非表示/違反報告)
ローズ - 本当に楽しかったです！！ (2020年4月19日 5時) (レス) id: 9c4c55a475 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - 藍風陽鈴さん» コメントありがとうございます！！私も続編作る方向ですのでその時はまた是非よろしくお願いします！！ (2020年3月8日 17時) (レス) id: cebf47b228 (このIDを非表示/違反報告)
藍風陽鈴(プロフ) - 完結おめでとうございます！毎日更新を楽しみにしてました。毎回キュンキュンドキドキニヤニヤが止まりませんでした笑続編も読みたいです……！ (2020年3月8日 14時) (レス) id: 5ab6d95f76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユーリ | 作成日時：2020年2月9日 17時
