第50話 ページ1
「それで、なんでお前は俺について回ってるわけ？」
困ったように笑うルク様はそう言って私を見下ろした。
なんで、と言われても別に意味はない。
「あ、もしかしてフラれて寂しくて？」
相変わらずデリカシーのない彼は笑いながらそう聞いてきた。
「…。」
「まじか。冗談のつもりだったのに。」
「いえ…。伝える前に無意味だと言われたんです。私が抱いている感情は無意味だ、と…。」
「あー、そっち。」
彼は困ったようにただ笑うだけだった。
私だってもうどうしたらいいのか分からない。
無意味だと言われてしまえば自分でもそう思うしかない。
「どうしたらいいですかね。」
「さてね。でもウルド様も酷いよなぁ。お前の好意を知ったうえでお前を手放さないんだから。」
＿＿自分は振り返らないくせに。
ルク様の言う通りだった。
そんな酷い人とまだ一緒にいたいと思う私もどうかしている。
「A。」
いつも通り、あなたは私の名前を呼ぶ。
「はい。」
いつも通り、それに私が返事をする。
何も変わらない。
これまでも、これからも。
ルク様を見れば、小さな声で、
「ほら、行きな。」
なんて言って私の背中を押した。
ウルド様に近づくと、前と変わらず彼は私を真っ直ぐに見た。
「あの、何かご用ですか？」
「演劇を見に行く。」
一緒に行くか、と聞かなくても私がついていくのを分かってる。
だから、その続きは言わないで彼は先に歩き出してしまった。
ここで私が行かないと言えば彼はどうするんだろう。
きっと、どうもしないんだろうな。
…そんなこと、言う勇気もないけど。
だから私は黙って彼について行った。
「あ。」
そういえば、アレクさんが次劇を見に来た時に話があると言っていた。
「なんだ。」
「な、なんでもないです。」
…ウルド様には言わない方が良いだろうか。
まぁ、言ったところで彼は興味ないか。
でもなんだか少し嫌だった。
カミラさんとフェリド様の2人に警告された以上、警戒しないわけにもいかない。
優しそうな人に見えるけどなぁ。
そう思いながら、私はウルド様と彼らの演じる舞台を見ていた。
劇が終わり、私がアレクさんを探そうか考えていた時だった。
「来い、A。」
そう言われ、少し離れた椅子に座るウルド様は手を差し出した。
これから何をされるのか、自分でも分かっていた。
だから首元についた飾りのリボンをシュルッと音を立てて解く。
「いい子だ。」
そう言ったウルド様は、私の腕を引っ張り自分の膝の上へ横抱きにした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユーリ(プロフ) - ローズさん» 読んでいただきありがとうございます！ルク様もカッコイイですよね！もし余裕があれば作成させていただきます！^ ^ (2020年4月19日 6時) (
レス) id: cebf47b228 (このIDを非表示/違反報告)
ローズ - 全部読ませていただきました。本当に楽しかったです！特にルク様がカッコよくて...もしよければルク様の小説見てみたいです^^ (2020年4月19日 5時) (レス) id: 9c4c55a475 (このIDを非表示/違反報告)
ローズ - 本当に楽しかったです！！ (2020年4月19日 5時) (レス) id: 9c4c55a475 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - 藍風陽鈴さん» コメントありがとうございます！！私も続編作る方向ですのでその時はまた是非よろしくお願いします！！ (2020年3月8日 17時) (レス) id: cebf47b228 (このIDを非表示/違反報告)
藍風陽鈴(プロフ) - 完結おめでとうございます！毎日更新を楽しみにしてました。毎回キュンキュンドキドキニヤニヤが止まりませんでした笑続編も読みたいです……！ (2020年3月8日 14時) (レス) id: 5ab6d95f76 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユーリ | 作成日時：2020年2月9日 17時
