好きじゃない。【終わりのセラフ】

第46話 ページ49

「ぷっ、あはは。Aったら、そんな事をしたの？」


私の顔を見てクスクスと楽しそうに笑っているのはクルル様だ。


特にこれといって用事はなかったがまた来てもいいと言われていたので彼女のところへ来てみたわけだ。


今考えると本当に私は度胸があると思う。
だって吸血鬼の女王に用もなくただ会話しにくるだけなんて。


まぁ彼女も楽しそうだからいいんだけどさ。


「はぁー。あの時ワインなんて飲むんじゃなかったって今すごく後悔してるんです。」


「ふふっ。けどその時のフェリドの顔は見たかったわね。きっと間抜けな顔をしていたんでしょう？」


「どうでしょうね。私はその辺の記憶が酔ってて曖昧なんですけど。」


困ったように笑ってそう言うと、クルル様も「あら、残念。」と言って笑った。



「好きだって言えばいいのに。」


「まさかっ。私は人間ですよ？そんなこと言えるわけありません。きっと相手にしてもらえない。」


「確かにそうかもしれないわね。けど、私はあなたの事は好きよ？」


クルル様は微笑んで私の頭を撫でてくれた。


吸血鬼の女王、私はそんな彼女になんて恥ずかしい相談をしているんだろう。

それに慰められている。

ちょっと恥ずかしい。



「私にはもう恋愛感情なんてよく分からないけど、フェリドもあなたの事が好きみたいよ？」


「あはは。けどきっと…私と同じ“好き”にはなれないですよ。」


「…そう。まぁ、フェリドに何かされたら私のところへ来なさい。アイツ殺してあげるから。」


ニコニコしているクルル様のその言葉には引きつった顔で笑うしかなかった。


「…あら、お迎えが来たみたいね。」


突然彼女はそう言って扉の方を見た。

意味がわからず私も彼女と同じ方向を向くと音を立てて扉が開いた。


その隙間から見えた揺れる銀色。

真紅の瞳が私をとらえ、目を細めて笑った。


「Aちゃーん。本当にクルルの所にいるなんて僕びっくりなんだけど〜。」


「誰が入っていいと言ったのフェリド。」


クルル様はまるでゴミを見るかのような目でフェリドを睨んでいた。


なぜ最初から喧嘩腰…。


「誰が僕のAを取っていいって言ったの？」


だからお前もなぜ喧嘩腰。


「貴様…。」


「あーの！クルル様！今日は色々聞いてくださってありがとうございました！」


私は少し小走りでフェリドの方へ行き背中を押した。


「ちょっとAおさないでよー。」


「いいからっ。クルル様、また来てもいいですか？」


「ええ。変態の悪口はいつでも聞くわよ。」


それは喜んでもいいのだろうか…。

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