第43話 ページ46
「え、A?」
「ひっ…。私のっ、ワイン…なのに…っ。」
Aは泣きながら必死にそう言っていた。
彼女の泣く顔は見たくない。
でもこれ以上酔わせるのもちょっと…。
「フェリド君、Aちゃんすごい泣いてるけど。」
クローリー君も少し焦ったように半笑いで僕にそう言ってきた。
「ん〜。じゃあ、あとちょっとだけだよ?」
取り上げていたワインボトルを彼女の目の前に戻してやると素早くそれを取り上げ自分のグラスに注ぎ飲み干した。
「あっははは!ばっかじゃないのフェリド!私が女優ってこと忘れてるんれふかぁ?ぐふふ。」
さすがといったところか。
酔っても彼女の演技の上手さは健在だ。
僕もクローリー君も呆気にとられてそのままAの姿を眺めていた。
彼女はソファから立ち上がり向かいに座っていたクローリー君のところへ行った。
「クローリーしゃん、クローリーしゃん。……クローリーしゃん!って言ってるじゃん!」
「あ、はいはい!聞いてるよAちゃん。」
「くろーりしゃん。この前フェリドがね、ふぇしどが…ふぇ………ふぇって誰ですか?」
「え。」
クローリー君は固まってゆっくりと僕の顔を見た。
困ったように小さな声で、
「これ、どうしたらいい?」
と聞く。
「ね、ねぇA。ほらクローリーくん困ってるからさ、僕の横においで。」
「うる、うるしゃい!フェリドは黙ってろ!今私はふぇって誰のことか聞いてるの!」
それ多分僕のことだよね。
耳まで真っ赤にしてAはまたふらふらと歩き始め僕の元まで来た。
そう僕の横に……
「…A。君は、どこに座ってるのかな?」
「ふぇいどのお膝。」
彼女は上機嫌でニコッと笑った。
「許す。」
「フェリドくん単純すぎ。」
そんなことを言われても仕方ない。
可愛いんだから。
「でも流石にこれ以上はダメだよ。ほら、お酒以外ならなんでもあげるから。何がいい?」
「…本当に、なんでもくれる?」
「うん。言ってごらん。」
そう言うとAは立ち上がってガッと僕の胸ぐらを掴んだ。
かと思ったらそのまま急に視界が揺れた。
Aが僕に跨っている。
「え、ちょ、A?クローリー君どうしよう。僕襲われるかも。」
「たまにはいいんじゃない?」
彼はそう言って楽しそうに僕らの今の状況を眺めていた。
僕が人間の女なんかに押し倒されるのがあまりにもレア物だから楽しんでいるのだろう。
「A、一体何……っ?!」
次の瞬間、もう不味いとしか思わないワインの味を微かに感じた。
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ユーリ(プロフ) - ゆゆ助さん» 大好きと言っていただけて嬉しいですっ。ありがとうございます! (2019年3月21日 0時) (レス) id: ec0c133e4a (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - InaNyanさん» 頑張ってると思うと言っていただけて嬉しいですっ。今後もよろしくお願いします! (2019年3月21日 0時) (レス) id: ec0c133e4a (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ助 - いろいろ口だしてしまってすみません。この作品大好きです、更新頑張ってください! (2019年3月20日 22時) (レス) id: 79e1c2e2f0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ助 - InaNyanさん» ほんとにそれなです。ちょっと注文が多すぎるんじゃないですかね…?そんな言うんなら自分で書いた方がいいと思います。ユーリさんもあーしてこーしてって他人が細かく決めたものを書いていてもつまらないと思いますけど…。 (2019年3月20日 22時) (レス) id: 79e1c2e2f0 (このIDを非表示/違反報告)
InaNyan(プロフ) - 夏季さん» これは私の勝手な意見ですが、作者様は作者様なりに頑張ってると思うのですが…。こんな部外者がすみません。 (2019年1月29日 20時) (レス) id: 248aef0291 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユーリ | 作成日時:2018年12月7日 2時