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第20話 ページ21

「美味しそう。」


目を細めて笑っている吸血鬼が怖くて固まってしまった。

動かなくなってしまった私を見下ろして顔を近づける。


「いい子だね。」


そう呟いて私の首を掴んでいた手で今度は顔を横に向けさせた。
肩よりも少し上、首のラインに冷たい2本の牙が当たる。

「ひっ。」


もうどう足掻いたって離してくれそうな雰囲気なんてない。
そして、それをズクリと埋められた。


「ぁ…は…!んっ……ッ…。」


痛い。

痛いのに痛くない、そんな感じもした。

どんどん自分の中から血液が無くなっているのを感じる。
人間は体の中の血の3分の1か、3分の2だったか、無くなると生命の危険が及ぶという。


そんな量には達していないだろうが、この吸血は私を恐怖に陥れるのに十分なものだった。

出したくもないのに、自然と目の端には涙がたまっていく。

「やっ…!ふっ…くろぉ、りー様…。」


そこで一度牙が抜かれ、彼は私をまじまじと見た。
口元にはべっとりと血が付いている。

それを少しだけ手で拭って彼はほくそ笑んだ。


「君、血の味も最高だけどさ。それ無自覚なわけ?」


何の事を言っているのか分からないが私は今それどころではなかった。

体が熱い。
息がしづらい。
おまけに両手は掴まれたままのため涙は拭えない。


「はぁっ…も、やめ…」


「やめないよ。君いくつ?ちょっと扇情的な声出しすぎじゃない?」


そう指摘を受けたがそんな事を言われたって仕方がない。
だって痛いんだもの。


「もう…やめてください。」


自分でもこんなに女の子らしい一面があったなんて驚いた。
ビクビクと震えているなんて。


「ははっ、君思ってたより可愛いや。」


それだけ言ってまた同じ場所に牙を突き刺した。
違う場所ならまだ良かったが、同じ場所のせいで痛みは更に倍増した。


怖い。
助けて。
フェリド…!


「ひっ…ぅ…や、だ…。」


涙が止まらない。
フェリド、どうして来てくれないの。
いつも私のそばにいるくせに、どうして今いないの。


止まらない水滴が頰を伝った。
痛みと恐怖とよく分からない感覚で頭がおかしくなりそうだ。


そんな時、扉のガチャっと開く音が聞こえた。
誰が入って来たのかはすぐにわかった。
その人を目で確認した瞬間、安心してまた涙が溢れでた。


クローリー様も彼が帰って来たからか、私から牙を抜く。

やっと自分の体から離れた凶器に少しだけホッとした。
まだ手首は掴まれたままだけど。




「クローリー君。」


笑っている。
けど、いつもより…少しだけ低い声。


「Aから離れて。」

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ユーリ(プロフ) - ゆゆ助さん» 大好きと言っていただけて嬉しいですっ。ありがとうございます! (2019年3月21日 0時) (レス) id: ec0c133e4a (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - InaNyanさん» 頑張ってると思うと言っていただけて嬉しいですっ。今後もよろしくお願いします! (2019年3月21日 0時) (レス) id: ec0c133e4a (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ助 - いろいろ口だしてしまってすみません。この作品大好きです、更新頑張ってください! (2019年3月20日 22時) (レス) id: 79e1c2e2f0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ助 - InaNyanさん» ほんとにそれなです。ちょっと注文が多すぎるんじゃないですかね…?そんな言うんなら自分で書いた方がいいと思います。ユーリさんもあーしてこーしてって他人が細かく決めたものを書いていてもつまらないと思いますけど…。 (2019年3月20日 22時) (レス) id: 79e1c2e2f0 (このIDを非表示/違反報告)
InaNyan(プロフ) - 夏季さん» これは私の勝手な意見ですが、作者様は作者様なりに頑張ってると思うのですが…。こんな部外者がすみません。 (2019年1月29日 20時) (レス) id: 248aef0291 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユーリ | 作成日時:2018年12月7日 2時

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