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第2話 ページ4

「次の作戦は新宿で決行するみたいね。シノアたちは前線?」


そう聞くと、誰よりも先に優一郎が反応した。


「ああ!そこで俺たちは吸血鬼どもをぶっ殺してやるんだ!」


それさっき聞いた。

そんなことを思ってついつい苦笑いになってしまう。


「おい、フィオレの顔見ろよ。お前のせいでドン引きだぞ。」


君月は呆れたようにそう言っていた。


面白い子たちだなぁ。



作戦の話をすると言っていたけど、つい手元にあった本を取って読んでしまう。


「なんの本読んでるんですか?」


シノアは後ろから覗き込むようにして本を見た。



「えっとねー、これはヨーロッパの歴史の本よ。とても面白い。」


「難しそうですね。」


与一もシノアと同じようにして本を覗いてくる。

興味があったのか、君月もだ。


「あ、これ中世に流行った黒死病の話じゃねーか。」


君月は本の中身を指差しそう言った。


「こくしびょうー?」


優一郎は知らない単語が出てきたからか、頭に疑問符を浮かべている。


「ペストのことだよ。あ、すまねぇ。バカには分からなかったなぁ。」



君月が見下したような顔をして優一郎にそう言うと、彼は顔を真っ赤にして怒鳴りだした。



「うるせーよ!ぺすと?ってなんだよ!病気なんて気合で治るんだよ!」


「…グレン中佐から少し聞いてたけど本当にバカな子なんだね。」


「ええ、本当にすごいほどのバカです。」


「バカ丸出しのバカだな。」


与一はその光景を見てあたふたしていた。

バカバカと繰り返し言われた優一郎はまだ頰を真っ赤にして怒っている。



「そもそも気合で治るもんじゃねーんだよ。」



「そうよ。あの病気は基本治らないものだったの。だから私も死んで………」




え?



私は、何を言ってるんだろう。


私があの病気で死んだ?


そんなはずはない。


だって今私はここで生きて…




「フィオレさん?」


シノアが心配そうに私の顔を見ていた。



「あ、あぁ。ごめん、なんでもない。」




たまに、こういうことがあった。


知らないはずのことを知っていたり、今みたいに自分が昔死んだとつい口走ってしまったり。



まるで、誰かの生まれ変わりみたいに。


いや、今考えるのはよそう。


明日は私の班で新宿までの道のりの調査があるんだった。




「私は明日城壁を出るから、もう休むね。」


そう言うと、みんな頷いて立ち去って行った。



手に持っていた本を触って呟く。


「前世の記憶かなぁ。」

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ユーリ(プロフ) - 宙ブラリンさん» 前作から読んでいただけるなんて!!ありがとうございます!コメントせずすみません!イベント参加させていただきました! (2019年12月30日 18時) (レス) id: 0114b7eb58 (このIDを非表示/違反報告)
宙ブラリン - 前作から読みました!切なく、それでいて甘いそんなお話ですね。とても面白かったです!イベントに参加していただきありがとうございました(*^-^*)次のお話も楽しみしています! (2019年12月30日 14時) (レス) id: 15f9c254a1 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - マリさん» 楽しんでいただけて良かったです!応援ありがとうございます!! (2019年9月15日 19時) (レス) id: cb16296158 (このIDを非表示/違反報告)
マリ(プロフ) - 最初から読ませていただきました!とっても面白かったです!次回作も頑張って下さい! (2019年9月15日 19時) (レス) id: 827ab458fd (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - なぎさん» なんて嬉しいコメント…!ありがとうございます! (2019年6月11日 19時) (レス) id: 58c08e5576 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユーリ | 作成日時:2018年2月20日 20時

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