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第28話 ページ30

「はぁっ、はぁっ。一人じゃ、やっぱキツイね。」


「当たり前だよ。」


周りに転がった死体を避けて歩き、私は安全な場所を探す。


安全な場所、と言ってもこの世界にはそんな場所ないだろうけど。


とにかく休めるところが欲しい。


「はぁっ、もう無理。限界。」


そんな私に追い打ちをかけるかのようにしてヨハネの四騎士が一体現れた。


奴は私を見つけ、とんでもない勢いで迫ってくる。


「あぁ、嘘でしょ。最悪。」


そんなことを言いつつ私は刀を構え、向かってくる敵に備えた。


緊張でか、思わず柄を持つ手に力が入る。


長引かせては私の体力がもたない。
一発で仕留めなければ。


呼吸を整え、精神を集中させる。


「よし…いくよ!」


一気に駆け出し、私は敵の側面へと向かった。
容赦ない化け物の攻撃をひらりとかわし、横から斬りかかる。


バシュッと肉の切れる音とともに辺りに血が飛び出した。

そして、敵はその場に倒れ動かなくなった。


「っはぁー。良かった。これで大丈夫……?!」



それは、突然だった。

体力もなく、疲れているせいか周りの気配を感じとることが出来なかったんだと思う。


「A!後ろにいる!」


紅華の声が遠のいていきそうだ。

腹部から出る大量の赤。刺されたんだと分かった。


「ぐっ、…こんな、ところで…!」


こんな所で死ねない。


歯を食いしばり、精一杯の力を振り絞ってすぐ背後にいたヨハネの四騎士に向かって刀を向ける。


そして、向かってきた奴の体を容赦なく斬り捨てた。


敵が倒れると同時に、私もその場に倒れ込んでしまう。


「はぁっ、はぁっ。…クローリー…。」


冷たい地面を肌に感じながら、止血しようと腹部に手を当てるが無意味だった。


止まることのない血は、私の手までも真っ赤に染め上げていく。



傷口が燃えてるんじゃないかっていうくらい熱くて、痛くて、苦しかった。


でもこんな小さな苦しみなんて、あの時の彼に比べれば大したことないのかもしれない。


「クローリー。ごめ…んね。死なないって…約束、したのに。」


また私は、あなたをおいて逝ってしまう。

本当に、ダメな女だね。



涙で滲んだぼやけた視界の中、先程まで気味の悪い色だった空が澄んだ青に変わったのが見えた。


「最期は青空じゃなくて…赤が、見たかったな。」


赤色の髪をした大好きな人を。


「A!!」


その声を聞いた瞬間、また涙が溢れ出した。

来てくれた。

あの人が。


また私を優しく抱え込んでくれている。


私の名前を呼んでいる。


「遅いよ…クローリー。」

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ユーリ(プロフ) - 宙ブラリンさん» 前作から読んでいただけるなんて!!ありがとうございます!コメントせずすみません!イベント参加させていただきました! (2019年12月30日 18時) (レス) id: 0114b7eb58 (このIDを非表示/違反報告)
宙ブラリン - 前作から読みました!切なく、それでいて甘いそんなお話ですね。とても面白かったです!イベントに参加していただきありがとうございました(*^-^*)次のお話も楽しみしています! (2019年12月30日 14時) (レス) id: 15f9c254a1 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - マリさん» 楽しんでいただけて良かったです!応援ありがとうございます!! (2019年9月15日 19時) (レス) id: cb16296158 (このIDを非表示/違反報告)
マリ(プロフ) - 最初から読ませていただきました!とっても面白かったです!次回作も頑張って下さい! (2019年9月15日 19時) (レス) id: 827ab458fd (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - なぎさん» なんて嬉しいコメント…!ありがとうございます! (2019年6月11日 19時) (レス) id: 58c08e5576 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユーリ | 作成日時:2018年2月20日 20時

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