第22話 ページ24
グレン中佐を残し、私達は空港へ向かっていた。
戦闘の後だからか、まだみんなの表情には緊張が見られる。
でも、私はそれどころではなかった。
またクローリーに信じてもらえなかった事にひどく胸が痛む。
私の事をどう思っていようと構わない。
ただ、私がAであるという事を信じてくれるだけでいい。
その願望のせいか無意識に動いていた足を止めてしまった。
「…?Aちゃん、どうしたの?」
深夜さんも足を止め、心配そうな顔をして聞いてくる。
「私、やっぱり戻ります。」
その言葉を聞いて彼は目を丸くしていた。
一緒にいた鳴海も口を開けて驚いている。
「A、何言ってるんだ。今からすぐに移動しないと、敵の援軍がくる。」
「そうだよAちゃん。もう僕らは行かないと…」
「すみません。私は、行かなきゃいけないんです。」
少し被せるようにしてそう言い、ぺこりと頭を下げて来た道を戻った。
後ろから聞こえる声を全部無視し、急いでクローリーのもとへ戻る。
市役所に行ってみたが既に誰の姿もなかった。
どこかに移動したみたいだ。
だが、幸いすぐ近くに数人の気配を感じた。
その気配のする方に駆けて行き、建物を横切って角を曲がる。
「…?!」
しかし、そのまま駆けて行きそうだった足を急いで止め、建物の陰に身を隠す。
あまりに突然のことで心臓がバクバクと激しく動いていた。
そっと顔を覗かせると、そこには何人もの吸血鬼たちがいた。
貴族も数人いる。
でも、その貴族たちの中にクローリーの姿は見えなかった。
どこに行ったんだろう。
「どうするの?僕の力を使ってもさすがにあの数は無理だよ。」
そんなこと言われなくても分かってる。
紅華の力を使ったとしてもすぐに殺されるのは目に見えていた。
これではクローリーを探しに行けない。
完全にタイミングを見失ってしまった。
「どうすれば………んん!!」
急に体のバランスが保てなくなり後ろへ倒れそうになる。
それと同時に口元を大きな手で抑えられた。
焦ってその腕を引っ張ってみるがピクリとも動かない。
「人間、こんな所で何をしている?」
頭上からそう言った問いが聞こえた。
顔は見えないがおそらく貴族だ。
一人では到底勝てない。
私の答えを聞く前にどんどん口元を抑える力は強くなっていった。
息が出来ない。
目尻に涙が浮かんでくる。
助けて…。
助けて、クローリー。
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ユーリ(プロフ) - 宙ブラリンさん» 前作から読んでいただけるなんて!!ありがとうございます!コメントせずすみません!イベント参加させていただきました! (2019年12月30日 18時) (レス) id: 0114b7eb58 (このIDを非表示/違反報告)
宙ブラリン - 前作から読みました!切なく、それでいて甘いそんなお話ですね。とても面白かったです!イベントに参加していただきありがとうございました(*^-^*)次のお話も楽しみしています! (2019年12月30日 14時) (レス) id: 15f9c254a1 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - マリさん» 楽しんでいただけて良かったです!応援ありがとうございます!! (2019年9月15日 19時) (レス) id: cb16296158 (このIDを非表示/違反報告)
マリ(プロフ) - 最初から読ませていただきました!とっても面白かったです!次回作も頑張って下さい! (2019年9月15日 19時) (レス) id: 827ab458fd (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - なぎさん» なんて嬉しいコメント…!ありがとうございます! (2019年6月11日 19時) (レス) id: 58c08e5576 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユーリ | 作成日時:2018年2月20日 20時