第44話 ページ49
《＿＿＿A》
「………ぅ。」
《A、目を開けてごらん》
聞き覚えのある柔らかな声に、ゆっくりと閉じていた目を開けた。
ムクリと体を起こし、立ち上がって辺りを見渡す。
そこには見たことある真っ白な世界が広がっていた。
一瞬だけ思考が止まった後、すぐにどこなのかを理解する。
「…私の、心。」
《そうだよ。よく覚えていたね》
先程よりも近くなった声に驚き、振り返る。
その姿を見た瞬間、何故だか安心感と同時に懐かしさを感じた。
そしてあまりの美しさに息を呑み、目を見開く。
肩に少しつくくらいの髪は、私と同じプラチナブランドで糸のように細くサラサラとしている。
肌は白くて、瞳はキラキラと輝く琥珀色だった。
声を聞かなければ男だとはわからないかもしれない。
何より印象的なのは、背中から生えた真っ白な翼。
とにかく、彼に目を奪われた。
とてもこの世のものとは思えないほど、彼は美しくて儚くて…………寂しげに微笑んだ。
「…綺麗。」
そう呟くと、その子は一瞬目を丸くし、また悲しそうに笑う。
《君は、いつも僕にそう言ってくれる。嬉しいよ》
「…？私は初めて言ったよ？」
《……そうだね。“ 今 ”の君とは初めて顔を合わせたから》
意味のわからない発言に首を傾げると、彼は困ったように眉を下げた。
「私が色々と思い出してきたから、姿を見せてくれたの？」
《そうだけど、まだ足りないよ。全てを思い出したわけじゃない。実際、僕が “ 今 ”の君、と言った意味がわからないだろう？》
「わからない。私は何なの？それにさっきだって、優とあともう1人いた天使…を見たら頭が痛くなって…それで…。」
あれ…そういえば、今現実の世界はどうなっているんだろう。
《…段々と記憶を取り戻してるから、本来の使命を果たそうとしてるんだ》
「使命？私が？」
《A自身の力じゃないよ。君は普通の人間だ。……普通の、どこにでもいる人間の女の子だったんだ。それなのに…》
彼はまた悲しそうに目を伏せた。
そんな彼の頬にそっと手を当てる。
「＿＿泣かないで。」
《…っ。本当に君は、優しいね》
泣きそうに笑い、優しく私の両手を握る。
同じくらいの身長のおかげで、彼と真っ直ぐに目が合った。
額同士が合わさると、ポツリと呟く。
《外では、神の使いの君がフェリド達を殺そうとしてる》
「どうすればいいの？」
《神になんて支配されちゃいけない。いいかいA、僕の言うことをよくお聞き》
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 267人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユーリ(プロフ) - 斑鳩@見る専さん» ステキなコメントありがとうございますー！！とっても嬉しいです！！バタついてて全く更新できていませんが落ち着いたらまた更新するのでぜひ読んであげてください！！ (2020年11月29日 7時) (
レス) id: b0d63da9ea (このIDを非表示/違反報告)
斑鳩@見る専(プロフ) - ほうほう ただの子供が吸血鬼に愛される話かと思って見てみれば、途中から あれこの子結構重要ポジではと思われる描写が少しずつ出てきて あ やっぱり重要な方なんですなってなって 凄く引き込まれました！ いつも更新ありがとうございます！ (2020年11月29日 1時) (レス) id: d0afc845e0 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - あすきさん» ありがとうございます！病院で働いてるもので仕事が忙しいですが頑張っていこうと思います！ (2020年10月17日 11時) (レス) id: 5fad441ba2 (このIDを非表示/違反報告)
あすき(プロフ) - これからの展開が楽しみです！更新頑張ってください！応援してます！ (2020年10月17日 11時) (レス) id: a838b5fe09 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - Rさん» ほんっとうにお待たせして申し訳ありません！！まだ楽しんで頂けてるなんて嬉しいです！ありがとうございます！！ (2020年7月19日 21時) (レス) id: f5d30a9e8a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユーリ | 作成日時：2020年3月9日 10時
