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第35話 ページ40

no side



納得する結論に至らず、フェリドは諦めてAに笑いかけた。



「ま、もしかしたらまだ何か思い出すかもしれないし。その時はまた教えてね。」


「わかりました。じゃあ、私はこれで……」



そう言ったAの視界が揺れ、何が起こったのか分からず目を見開いた。


微かに香った甘い香りに嫌な予感を覚えたが、その時には既に背中がソファへとついていた。



サラッと垂れた銀髪が彼女の頰にあたる。



「フェリド様…?」


「あは、本当に驚くくらい綺麗だよね君は。神の愛し子って言われる理由もわかる気がするよ。」


「…私、戻るので退いてください。」



Aを押し倒しているフェリドは、未だ楽しそうに笑うだけだった。


片方の手でAの頬を撫で、その手を今度は喉元に這わす。


傷だらけの首や肩を眺め、彼は薄く笑った。



「すごい牙の跡。これ全部ウルド様だよね?」


「…そんなの別に…」


「僕には関係ない?まぁ、そうだね。でも、君からはずっと美味しそうな匂いがする。」



目を細め、舌舐めずりをしたフェリドはAの耳元で囁いた。



「ウルド様の印がいっぱいついてるその首元に、僕のを上書きしたらどうなるのかな?」


「え…?」


「君のぜーんぶを僕で染め上げたら一体どうなるんだろう。」



本能が逃げろと言っているが、何度身を捩ってもやはり抜け出せない。



「…あの、私…。シノアに呼ばれてるので…。」


「あはぁ、可愛いねぇ。逃げられないとわかってるのに逃げる口実を作る。可愛くて愚かだ。」



彼の正論に言い返せず、不安げな表情を浮かべてAは逃げようと手を伸ばした。


しかし、簡単に両手を掴まれ、押さえつけられる。



「綺麗な君は…泣いたらもっと綺麗なんだろうね。」



その妖艶な笑顔を見て、Aの背筋にゾワっと悪寒が走る。


微笑むフェリドは恐怖そのものだった。


Aは怯えながら彼を見上げる。



「…フェリド様。」


「なぁに?」


「いや…。」


「何が?」


「何も、しないでください…。」



その言葉に、彼は嘲笑を浮かべる。


これから何が起こるのか、なんとなくAはわかっていた。


いくら嫌だと言おうが、彼が止まらないことも…。



「あは、可愛い〜。そんなに僕が怖い?」


「怖い…フェリド様、やめてください…。」


「やだよーん。だって僕はAちゃんの泣く顔が見たいんだから。………ね?二人で楽しもう?」



目を細めた吸血鬼が、美しく笑った。

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ユーリ(プロフ) - 斑鳩@見る専さん» ステキなコメントありがとうございますー!!とっても嬉しいです!!バタついてて全く更新できていませんが落ち着いたらまた更新するのでぜひ読んであげてください!! (2020年11月29日 7時) (レス) id: b0d63da9ea (このIDを非表示/違反報告)
斑鳩@見る専(プロフ) - ほうほう ただの子供が吸血鬼に愛される話かと思って見てみれば、途中から あれこの子結構重要ポジではと思われる描写が少しずつ出てきて あ やっぱり重要な方なんですなってなって 凄く引き込まれました! いつも更新ありがとうございます! (2020年11月29日 1時) (レス) id: d0afc845e0 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - あすきさん» ありがとうございます!病院で働いてるもので仕事が忙しいですが頑張っていこうと思います! (2020年10月17日 11時) (レス) id: 5fad441ba2 (このIDを非表示/違反報告)
あすき(プロフ) - これからの展開が楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2020年10月17日 11時) (レス) id: a838b5fe09 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - Rさん» ほんっとうにお待たせして申し訳ありません!!まだ楽しんで頂けてるなんて嬉しいです!ありがとうございます!! (2020年7月19日 21時) (レス) id: f5d30a9e8a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユーリ | 作成日時:2020年3月9日 10時

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