第33話 ページ36
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「神の使い…。聞いたことないな。」
レストは顎に手を当て考えたが、結局何も答えが出なかったのかため息をついた。
「あと何だったかなー。あ、そうだ。天気の話をしてましたね。」
ルクの言葉にウルドは呆れたような視線を向けた。
レストも同様の目つきで彼を見る。
「天気?」
「俺が聞いたのは…Aが悲しみ、苦しむと……」
「雨が降る。」
被せ気味でクルルはそう言った。
三人が彼女を見ると、ひどく驚いた顔で呆然と地面を見つめていた。
目を見開き、予想外のことに驚愕しているようだった。
「女王様?」
「…何故、それをお前が知っている。」
「何故って、俺はAから聞いたんですよ。あいつはリーグがそう言っていたと話していましたが。」
「クルル・ツェペシ。お前も知っていたのか。」
ウルドの言葉に彼女は驚いた表情のまま顔を上げた。
そして、一度口を噤み、意を決したようにまた口を開いた。
「それは…_____真祖が言っていた言葉だ。」
彼女と同様、他の三人も驚き少し息を呑んだ。
だが、ウルドだけはすぐに険しい顔に戻る。
「何故ここで真祖が出てくる。」
「…シカ・マドゥは言っていた。彼女が苦しみ、悲しむと雨が降る。怒りに震えると大地が揺れ、心穏やかな時は晴天となる。……Aのことだったのか。」
クルルのその言葉に、ウルドは何かを考えた。
想定していなかった事態に誰もが困惑する。
「神の使いとはなんだ。」
「私もそこまでは知らない。ただ、真祖がそれを言っていたのを聞いただけだ。何千年も前の話に何故Aが出てくるのか、私にもわからない。」
「A曰く、リーグも何百年とあいつを探していたらしいですよ。…本当、わかんないことだらけだ。」
クルルとルクの言葉から、これ以上のことは得られないだろうと判断した。
静かに息を吐き、ウルドは地上へと移動する。
辺りを見渡すと、ヨハネの四騎士がいないことに気づいた。
「…何が起こった。」
Aのことも、リーグのことも何もわからない。
蓋を開ければ次々と出てくる謎に彼はまた一つため息をついた。
ふと、ポツ…と自分の頰に冷たいものが落ちた感覚が伝わる。
そっと指でなぞると、指先が濡れた。
それが引き金となったかのように、アスファルトが点々と黒く濡れていく。
ポツポツと降ってきた雨を見て、小さく呟いた。
「……泣いているのか、A。」
雨の音が響く中、ウルドは踵を返しまた地下へと戻って行った。
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ユーリ(プロフ) - 斑鳩@見る専さん» ステキなコメントありがとうございますー!!とっても嬉しいです!!バタついてて全く更新できていませんが落ち着いたらまた更新するのでぜひ読んであげてください!! (2020年11月29日 7時) (レス) id: b0d63da9ea (このIDを非表示/違反報告)
斑鳩@見る専(プロフ) - ほうほう ただの子供が吸血鬼に愛される話かと思って見てみれば、途中から あれこの子結構重要ポジではと思われる描写が少しずつ出てきて あ やっぱり重要な方なんですなってなって 凄く引き込まれました! いつも更新ありがとうございます! (2020年11月29日 1時) (レス) id: d0afc845e0 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - あすきさん» ありがとうございます!病院で働いてるもので仕事が忙しいですが頑張っていこうと思います! (2020年10月17日 11時) (レス) id: 5fad441ba2 (このIDを非表示/違反報告)
あすき(プロフ) - これからの展開が楽しみです!更新頑張ってください!応援してます! (2020年10月17日 11時) (レス) id: a838b5fe09 (このIDを非表示/違反報告)
ユーリ(プロフ) - Rさん» ほんっとうにお待たせして申し訳ありません!!まだ楽しんで頂けてるなんて嬉しいです!ありがとうございます!! (2020年7月19日 21時) (レス) id: f5d30a9e8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユーリ | 作成日時:2020年3月9日 10時