第三話 ページ5
「いっ、一万……!?」
店主が驚いて青年を見る。
「おや、足りませんでしたか?」
「い、いや……」
「なら良いですよね。お釣りは結構ですので、弟を許してやってください」
「あ、ああ……まあ、本当なら。……坊主、その、なんだ……、悪かったな」
店主はお金を受け取り、ぎこちなく頭をかくと厨房のむこうへと消えた。
「じゃあ、僕たちもこれで」
そう言って、代払いをしてくれた男の人は僕の腕をつかみ、店の引き戸を開いた。
全くもって訳がわからなかったが、不安で泣いてしまっていたそのときの僕に、いま置かれている状況を分析する余地はなかった。
見知らぬ誰かに腕を引かれ、僕は泣き顔を見られないようにと俯きながら付いて行った。
路地をしばらく歩いて、もう探偵社が在る大通りに出た気がしたが、どうやらそうではなかったようだ。人の気配は感じても車の音は聞こえない。
「大丈夫?」
ふと、腕を引く男の人に声をかけられた。
「ねぇ、大丈夫?」
「……あ、ぇ……」
それでも、嗚咽が漏れるだけでうまく声が出ない。顔もみっともなくて上げられなかった。
「……待ってて。落ち着くまで、そこのベンチに座ってなよ」
腕が離され、僕は側にあったベンチに座らされた。男の人は何処かへ行ってしまったようで、ぽつんとひとりぼっちになる。
しばらく経って、ようやく我に戻ったときには自分の仕出かしたことの大きさを思い出し、自分に呆れ、後悔した。
(何やってんだろう。知らない人に奢らせて、こんな迷惑かけて。きっと呆れておいて行っちゃったんだ……)
そうひとりで考えていると情けなくなってきて、また涙が溢れてきた。
(……も、帰らなきゃ。昼休み終わっちゃう……)
そう思い、ベンチから立ち上がろうとした時だ。
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千代@安定くん愛してる(プロフ) - 凍り姫さん» ありがとうございます!本日ひさびさに更新することが出来ました。更新が遅くて本当に申し訳ないです… (2019年9月8日 20時) (レス) id: 06cd9985f5 (このIDを非表示/違反報告)
凍り姫 - 続きが楽しみです!頑張ってください!! (2019年1月12日 2時) (レス) id: 7ecdf95431 (このIDを非表示/違反報告)
千代@安定くん愛してる(プロフ) - 姫女さん» コメントありがとうございます。更新遅れて申し訳ないです!そして不覚にも笑ってしまいましたw (2018年12月23日 23時) (レス) id: 8c6514bcbc (このIDを非表示/違反報告)
姫女 - おい、其処のお兄さん場所変われ (2018年8月16日 1時) (携帯から) (レス) id: 8d2132b5e1 (このIDを非表示/違反報告)
千代@安定くん愛してる(プロフ) - カラナ(月華)さん» ありがとうございます!忙しくてほんっっとうに更新遅いですが、がんばっています!コメントありがとうございます!! (2018年8月2日 0時) (レス) id: 8b4fc0089f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:果汁入りラムネミックス | 作者ホームページ:
作成日時:2018年3月13日 13時