第十四話 ページ16
「さて、……と」
こうして、きちんとお兄さんと向き合ったのは昨日の夜ぶりだった。薄々気づいてはいたが……まさか。
「もう、気づいたって顔してるね」
「へッ!?」
ふいにお兄さんに心を読まれたかのような気がして、僕は声をあげて驚いていしまった。
「……そ。僕、君が『お兄さん』って呼んでた男。化粧とか髪型で全然違うでしょ?」
「え、あ、えっと……あの、全然わからないんですけど、僕はどうしてここへ?」
「……うん、そうだね。まだ混乱してるみたいだけれど、僕からきちんと説明するよ」
お兄さんはそう一言言うと、腰かけていた硝子の椅子から立ち上がり、座る僕の横で、僕を見上げるようにして跪いた。
「改めて挨拶をするよ。僕は清水家現頭首。名は Aだ」
お兄さんは、僕の手をとり、今度は満足そうに顔を綻ばせた。あの黒髪のお兄さんと同じ、優しげな笑顔だった。
しかし、目の前の彼は次の瞬間、僕にとって信じられない一言を発した。
「会えてうれしいよ、僕の弟 敦……」
「…………は?」
僕はその一言を聞いて、莫迦みたいに、本当に阿呆みたいに口をぽっかりと開けて目を丸くした。
きっと、聞き間違えてしまったのだろう。疲れているんだ僕は、うん。最近忙しかったし……。
「えっと、お兄さん、今なんて?」
「あれ、聞こえなかった?僕の弟だって言ったの」
「…ンんん?」
オトウト
おとうと
弟
・・・。
しばしの間。
「……え。え?………えええぇぇぇえぇええぇぇぇぇ!!?」
この広間全体に響き渡るほどの、いやそれ以上の大声で、僕は叫んだ。
自分の耳がどうかしてしまったのではないか、夢なのではないかと、僕はこれほど自分を疑ったことはないと思う。
「いやいやいや、何を言ってるんですか!僕に兄弟なんていませんよ!」
「憶えてないのも無理はないよ。本当に幼い頃、僕らは孤児として別々の孤児院に引き取られたんだ。僕は君の兄だから、君よりは記憶に残っているのだけれど」
「……」
僕は、今世紀最大の驚きに遭遇してしまったのかもしれない。
「冗談、ですよね?」
「そう見える?」
「人違いじゃないですか?」
「君みたいに特徴的な容姿の弟、ふたりといるはずないでしょ。」
「…本当に?」
「うん。君は、生き別れの僕の弟で 中島敦。」
(…え、ええぇぇぇ……――――)
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千代@安定くん愛してる(プロフ) - 凍り姫さん» ありがとうございます!本日ひさびさに更新することが出来ました。更新が遅くて本当に申し訳ないです… (2019年9月8日 20時) (レス) id: 06cd9985f5 (このIDを非表示/違反報告)
凍り姫 - 続きが楽しみです!頑張ってください!! (2019年1月12日 2時) (レス) id: 7ecdf95431 (このIDを非表示/違反報告)
千代@安定くん愛してる(プロフ) - 姫女さん» コメントありがとうございます。更新遅れて申し訳ないです!そして不覚にも笑ってしまいましたw (2018年12月23日 23時) (レス) id: 8c6514bcbc (このIDを非表示/違反報告)
姫女 - おい、其処のお兄さん場所変われ (2018年8月16日 1時) (携帯から) (レス) id: 8d2132b5e1 (このIDを非表示/違反報告)
千代@安定くん愛してる(プロフ) - カラナ(月華)さん» ありがとうございます!忙しくてほんっっとうに更新遅いですが、がんばっています!コメントありがとうございます!! (2018年8月2日 0時) (レス) id: 8b4fc0089f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:果汁入りラムネミックス | 作者ホームページ:
作成日時:2018年3月13日 13時