第七場 ページ3
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「ようこそっ…御出、下さいました…」
広い肩
鹿のような眼差し
震えている 大きな手。
その様子が可笑しいようで、哀しいようで
渇いた笑いを一つこぼせば
彼は不思議そうに私を見つめたあと、すぐに表情をもとの強張らせたものへ戻した。
「…楼主様、」
「…ソンチャン」
「あ、…」
私のこと この夜だけは
楼主様と呼ぶの、よしなさい
…そう告げたことを思い出したみたい。
ソンチャンは私を見つめ、
困ったように微笑んで …そう
いつも見せる、優しい笑顔で そっと頷いて
「…Aさん」
そう、私を呼ぶ姿が
また ほんの一瞬だけ
…テヨンに重なった。
「…だめだ、緊張が…」
「ふふ、いつも通りにしてればいいのに」
「だって… 変な意味じゃなくて、相手がAさんだなんて、気が動転しそうなくらい緊張しますよ…」
「今は私のこと、ただの女性だと思いなさい」
「… …わかりました」
うん、と 再び頷いて
顔を上げた時には、もう
私とそこらを歩いて話す時のような
穏やかな笑顔を浮かべていた。
ジェミンが此処を旅立ち、ソンチャンの水揚げ相手がなかなか決まらないことをヨンホに相談したところ、
“じゃあAさんがやればいいと思うよ”
…と
比較的真面目な顔で、彼はそう言ってきた。
その後も数日はお客様にお声掛けをしようと迷ったけど、なかなかソンチャンに適切だと思える方が見つからず
……私が誰かの水揚げをするなんて、いつぶり？
それこそマークが最後だったような、そんな気がする。
結局は自らソンチャンに声をかけ、
今日まで彼が私に慣れてくれるよう
少しの間 行動を共にしてみたけど
彼が此処へやって来たその日から、変わることのない真っ直ぐな性格と
女性と殆ど関わったことが無いにも関わらず、紳士的な対応
何よりも、柔和な愛らしい笑顔と
少しずつ大人の男性に成り行く その過程の真っ只中にいる
まるで四季の移ろいみたいに
微かに変化していく表情が どれほど魅力的か
気付けば、私もすっかり
…心の穢れた部分を洗い落とすかのように
まだ何色にも染まっていないソンチャンに、
気持ちを許していた。
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rurueru - このお話は本当に書籍化して欲しいぐらいお気に入りです。これからも長く続いてほしいですがこの願いははたまた、、、 (2021年2月24日 22時) (
レス) id: cf29b96430 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - もう5年くらいいろんな方の作品を読んでいますがTOP3に入るくらい好きな作品です。終わりが近づいていてとても惜しいです、、 (2021年2月20日 23時) (レス) id: dce001e485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2021年2月19日 22時
