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WI side
Aさんは、俺を見上げて 口を閉ざしたまま。
俺は必死に思いを伝えたあと、なんだか完全燃焼した気分になってしまった。
…俺はこんなにも、Aさんに懸ける思いがあったんだ、って。
少しおかしいほどに そう実感しては
Aさんの頬を撫で、微笑みを溢してしまった。
「…確かに、Aさんが言ってることも正しいですね。なんで俺が、って。これまでお二人の関係に干渉どころか、興味すら示してなかったのに」
「……本当よ。…なんで…みんなして、こんなに私たちのこと…」
「…それだけ心配で、好きなんです、みんな。貴女のことが」
Aさんは、困ったように眉を下げる。
あどけないその表情に、
俺はまた彼女の頬を撫でて そっと目を伏せた。
俺の長い後毛が、貴女の首元に触れる。
貴女が作ってくれた紫陽花の耳飾り。
…貴女から漂う、切ない 花の香り。
俺はAさんの肩を抱き寄せる。
そして、思い出すんだ。
故郷なんて知らないまま、放浪を繰り返して
自分がどこの誰なのか ずっと分からなくて
家族も 友人も 好きだった人も
全てを失った 何も残っていない、ぼろぼろの俺を
貴女がこんな風に
暖かく、抱きしめてくれた
貴女と出会ったその日の景色。
貴女がくれたものは
あまりにも大きくて 暖かい。
「…Aさん」
「…」
「勇気、あげます」
「え…？……っ…、」
瞼を閉じる。
…最近はずっと こうしていなかった。
貴女はテヨンイヒョンが誰より大切なんだと気付いていたから、むやみに触れるわけにもいかないし
そして、俺にもまた 好きな人が出来たから
だけど
俺に、貴女が
着物の着方 化粧の仕方 髪の結い方
付きっきりで教えてくれた あの日々
貴女をこの腕の中に抱いて
…そう、こんな風に
貴女と交わす接吻が、
俺 とても好きだった
愛されていると、感じた
その瞬間だけは 確かに
貴女に愛されている
誰かに、愛されている
こんな俺でも愛してくれる貴女が
俺は今でも 愛おしいから
俺の愛を、貴女に捧げるから
…だから、どうか
テヨンイヒョンを、その 大きな愛で
包み込んでほしい。
唇が離れて、
潤んだ瞳で 俺を見つめている
何が起きたって、結局は 一番 愛おしい
そんな貴女に、
俺はもう一度 唇を寄せた。
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rurueru - このお話は本当に書籍化して欲しいぐらいお気に入りです。これからも長く続いてほしいですがこの願いははたまた、、、 (2021年2月24日 22時) (
レス) id: cf29b96430 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - もう5年くらいいろんな方の作品を読んでいますがTOP3に入るくらい好きな作品です。終わりが近づいていてとても惜しいです、、 (2021年2月20日 23時) (レス) id: dce001e485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2021年2月19日 22時
