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「あら、如何なさいましたか？」
しっとりとした、低い声が 背後から降りかかってくる。
チェさんがようやく私の肩から手を離した。
…良かった。
私が振り向くと、そこには
紫陽花色の優雅な着物に身を包んだ、
天女のようなウィンウィンがいた。
チェさんの瞳の色が変わる。
そうだ、チェさんはウィンウィンが一番のお気に入りだったっけ。彼とならば男色の趣味も芽生えるだとか何だとか、言っていた。
ウィンウィンもウィンウィンで、
チェさんの扱いには慣れているようだった。
「お、おお！久々だな、ウィンウィン！どうしたんだいきなり、いやぁ… それにしても、綺麗だ…」
「何やら言い争う声が聞こえてきましたので… 楼主様に一体なんのご相談でしたか？」
「それは…その、」
「商談や取引のお話でしたら、こんな店先でお話しなさらずどうぞ中へ。僕がお茶をお出しいたします」
「ああいや、そう言うわけでは…」
「では、どういったお話を？」
「…」
決まりが悪そうに押し黙ったチェさんは、
私とウィンウィンの顔を交互に見て
苦虫を噛み潰すように、口を歪めた。
「クソッ、覚えてろ！」
ぺっ、と唾を吐き捨てて 去っていく。
その後ろ姿が消えるまで見送ると、
思わず頭から血の気が引いて、よろめいた。
ウィンウィンの見かけによらずしっかりした腕が
私を抱きとめて 背中を支える。
…睡蓮の香り。
そっと目を開ければ、
柔らかな眼差しが、私へと降り注いでいた。
「…大丈夫でしたか？」
「……ええ、ありがとう」
彼は微笑み、私の額に その大きな手を当てると
体を気遣うように、優しく私の頬を撫でた。
こんなに素直な人の温もりに触れたのは、
なんだかとっても 久々のことのように思えて
“貴女は、どうしたいんだよ”
“どう生きたいんだよ”
…ヘチャンの迫真の声色、
その言葉を 思い出したとき
私を責め立てるような瞳と声が 瞬間的に蘇ったとき
また どす黒い色をした何かが私を呑み込みそうになった。
頭を横に振って、言葉にせずとも分かるような、穏やかな優しさだけが広がるウィンウィンの胸の中に
いけない甘え方をするように、頬を寄せるけれど
だけど その瞳の中には
…ヘチャンとおんなじね
柔らかな眼差しはいつしか、
明確な意志を持つように
私を見つめていた。
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rurueru - このお話は本当に書籍化して欲しいぐらいお気に入りです。これからも長く続いてほしいですがこの願いははたまた、、、 (2021年2月24日 22時) (
レス) id: cf29b96430 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - もう5年くらいいろんな方の作品を読んでいますがTOP3に入るくらい好きな作品です。終わりが近づいていてとても惜しいです、、 (2021年2月20日 23時) (レス) id: dce001e485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2021年2月19日 22時
