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「ジェミン」
「はい」
「今年の、四月一日から。…貴方を花魁とします」
「…！」
ぼうっと燃える 囲炉裏の炎。
煌々と部屋を照らす中、揺れる灯りが 彼の表情に美しい陰陽を描く。
ジェミンは驚き、
それでもすぐに私の言葉を受け入れて頷いた。
深々と膝を折ると、白銀の着物の裾が、花弁が重なるように折れる。
「…大変有難く、お言葉を賜ります」
「春祭りでお披露目です。よろしいですね」
「分かりました」
「…それから」
「はい」
「貴方と、それから 貴方を一番贔屓にされているお客様が 身請け話を独自に進めていると」
「…！」
「…耳にしましたわ」
ジェミンの顔色が さっと変わる。
一瞬の間に俯いたかと思えば、
どこか覚悟を決めたような顔で 私を見つめた。
その瞳の色に、心臓の奥が締めつけられる。
…ジェミンって、こんなにも
男らしい表情を、する子だったかしら。
まるで、大切なものを 何がなんでも守るというような
そんな、強い意志を感じる。
こんなにも、人間らしく
生き生きとした彼の瞳を、見たことが無かった。
彼をこんなにさせたのは、
…こんなにも、眩しくさせたのは
あのお方、なのね。
「…申し訳ありません。一番に楼主様にお伝えするべき事柄でした」
「そうですわね。貴方なら心得ていると思っていましたが」
「誠に、申し訳ありません」
「…事実ですの？」
「…はい。事実です」
「…」
「近々、正式にヌ… お相手の方から、楼主様に直接ご挨拶申し上げる予定を、立てていました。報告が遅れ大変申し訳ありません」
「……貴方が身請け、ね…」
ジェミンは私を真っ直ぐ見つめている。
私は涼しい顔をしながらも、
本当は 空から逃げるように窓際へと歩いた。
「…貴方は一度たりとも、どなたとも身請け話を進めようとはしませんでしたね。これまで」
「そうですね。…誰かを好きになるってことが、よく分からなかったから」
「…本気、なのですか」
「当たり前でしょう」
ふふっ、と 微笑む姿は
あどけない少年の面影を片隅に残しつつも
自信に満ち溢れた、立派な男性の
私の隣に並んで、夜空を見上げる横顔。
「…なんだか、変わったのね」
そう、思わず口走る。
言葉にしてから気付き、口元を押さえれば
ジェミンは今日 初めて、目を細めて素直に笑った。
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むうみん - これもしかして、、ジェミン編もテヨン編とと同じ時間軸、世界線に存在してますか？面白すぎる、、いろんな主人公の視点で見れますね。官能的だし、すきです。言葉も難しいの多くてすごい、、応援してます (2021年3月14日 17時) (
レス) id: ad7920768e (このIDを非表示/違反報告)
ray - 一昨日この作品を見つけ一気読みしました。主人公の揺れる思いに胸が苦しくなります、、。これから主人公とテヨン（テンも？）がどうなってしまうのか続きが気になります。大変だとは思いますが頑張ってください！更新首を長くして待っています^^ (2021年1月15日 18時) (レス) id: 3feffcfcf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2021年1月14日 17時
