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テイルと別れた後、私専用の戸口から建物に上がるため、楼の裏に回った。
陽も短くなり、北風が肌を刺すようになって冬はすぐそばに来ている。
腕を擦りながら、束の間の家路を急ぐ。
不意の一瞬、
物陰に さっと消えていった、蝶の袖。
…こんなところで、どうしたの。
あの子の着物の柄は 全て覚えてる。
物置小屋の近くへ歩みを寄せてみれば、
やっぱり 彼の後ろ姿。
しゃがみ込んで何かをしている様子だ。
「何をしているのです？」
「あっ…… 楼主様、」
「…野良猫？」
「はい」
私に振り向いたテヨン。
夕陽に照らされる髪は、少し見ないうちにすっかり金色へと変わった。
その手には残飯だろうか、少量の煮干し。
そして彼の膝下には一匹の猫がいた。
猫が急かすように鳴き声をあげれば、彼は柔らかな微笑みを見せ、その煮干しを猫に与える。
誰も居ない倉庫の片隅で、私はテヨンのもとへ近付き、その様子を見つめていた。
「貴方が見つけたのですか？」
「ええ、最近ここに住みついていたんです。俺が面倒見てやりたいな、って…」
餌を食べ終え、甘えるように彼の手元へすり寄った猫を抱き上げると
慈愛のこもった瞳を細め テヨンはその猫の頭を撫でた。
その姿が、純真無垢な彼の幼い日々と重なり
一瞬だけ胸の奥に閃光が走った。
「…おまえは俺と一緒だね、って」
「…」
「思ったんです」
…野良猫、か。
まるでかつての自分を懐古するように、
テヨンは遠い昔を懐かしむような目で
その子猫を撫でていた。
「……可愛らしいですわね、その猫」
「ふふっ、そうなんですよ」
テヨンが猫を地面に下ろし、体をひと撫ですれば その猫は元気よく何処かへと駆けていく。
昔からテヨンは野良猫の世話をするのが好きだった。
此処に来る前、彼が幼かった頃
路地でも野良猫と過ごしていたのだろうか。
猫と接している時の彼の顔は、まるで少年のようになる。
着物の裾を払って立ち上がり、夕暮れの中で
大ぶりの花のようなテヨンが、私を見つめて微笑んでいる。
「どうでしたか、新しい少年は」
「上玉でしたわ。すぐに貴方にも紹介します」
「…取引先の方は、」
「心配は無用。…テイルと共に行きましたの」
「…、……テイリヒョンと…？」
一瞬で曇った彼の顔色。
私はわざと、気付いていないふりをした。
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むうみん - これもしかして、、ジェミン編もテヨン編とと同じ時間軸、世界線に存在してますか？面白すぎる、、いろんな主人公の視点で見れますね。官能的だし、すきです。言葉も難しいの多くてすごい、、応援してます (2021年3月14日 17時) (
レス) id: ad7920768e (このIDを非表示/違反報告)
ray - 一昨日この作品を見つけ一気読みしました。主人公の揺れる思いに胸が苦しくなります、、。これから主人公とテヨン（テンも？）がどうなってしまうのか続きが気になります。大変だとは思いますが頑張ってください！更新首を長くして待っています^^ (2021年1月15日 18時) (レス) id: 3feffcfcf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2021年1月14日 17時
