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その長くなった黒い前髪が、ふわりと舞い上がって
涼しげな目元が、私を見つめている。




不意に、突風が吹き荒れると
梯子が がたがたと揺れて

私は体勢を崩しそうになり、小さく悲鳴をあげた。









「アハハッ、Aちゃん、大丈夫」


「…笑い事じゃないわよ」


「もうちょっと、頑張って。ボクの手、掴んで」








うん と、腕を伸ばせば


その悪魔のように真っ黒に塗られた爪が
長い指が

私の手を 確かに掴む。




彼が私の腕を強く引っ張り、私は櫓の上へ登ることが出来た。







澄み渡る青空と、

心を洗うような 爽やかな風。





四方八方、どこを見渡しても

まるで無限に世界が広がっていくようだった。






彼が腰を下ろしている場所から、少し距離を取って座る。


彼は不思議そうに笑い、頬杖をついた。









「…なに、してたの。ここで」


「……鳥を見てた」


「鳥…」


「フフ、ボクまで自由に、なれる気がする。だから鳥、好き」






彼に倣って、空を駆ける鳥の姿を 追ってみる。



…こんな風に、こんな高さから空を見たことって
無かったかもしれない。


まるで、私まで浮遊しているような
彼の言う、“自由”を体感するような気分になる。




彼らを閉じ込めてるのは私なのに

…なに、言ってんだか。









「…Aちゃん?」


「え…?」


「……なんで、泣いてる?」


「っ……」









…テンに言われて気付いた。





あたしの体のくせに 言うこと聞かない。
止まれという命令を、全く聞かない。



頬を伝うのは、ただの水のはずなのに


なんで、こんなにも熱くて

こんなにも哀しくなるの。









霞む世界の、そのなかで

空の青色は まだまだ広がっていて


私の隣に座り込む彼は

呆れたように、包み込むように


優しい表情(かお)で 微笑んでいた。












「…キミは、ボクの前でしか、泣けないね」


「っ……、」


「…」







テンが、そっとその視線を 目の前の景色へと戻した。






私は、気の済むまで 泣き続けた。






テンは何も言わなかった。





ただ、私を 泣かさせてくれた。









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ray - 一昨日この作品を見つけ一気読みしました。主人公の揺れる思いに胸が苦しくなります、、。これから主人公とテヨン(テンも?)がどうなってしまうのか続きが気になります。大変だとは思いますが頑張ってください!更新首を長くして待っています^^ (1月15日 18時) (レス) id: 3feffcfcf6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:如月 | 作成日時:2021年1月14日 17時

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