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きっと、マークなりに 必死に考えて
その言葉を紡いだんだと思う。
立派だ。
彼の人間としての成長を、これでもかと感じた。
だけど
…私は、その手を
頬に触れるその手を
そっと、外して
戸惑いに揺れる大きな瞳に
…“いつも通り”の笑顔で 微笑みかける。
此処は遊郭。
あたしは楼主。
あんたは娼夫。
愛ですって?
…冗談は およしになって。
そして、そんないたずらで
あたしを惑わそうなんて 今後一切しないでよね。
…もしも、また したら
絶対に許さない。
あたしの心の中に、入ってこないで。
……もう、傷付きたくない。
泣きたく、ないの。
マークの逞しくなった肩を 強く引っ張って
彼を私の身体の下に 組み敷く。
呆気に取られているマークの表情をかき消すように、彼に口づけを落とす。
これでいいの、これで。
どうせマークも 気持ち良くなれればなんだっていいと思ってるはず。そうでしょ?…そうよね。
ほら すぐに、
私の舌を 追いかけ始めた。
私、もう分かってる。
あの頃のあたしも、マークも、もう此処にはいない。
此処にいるのは、
ただ 快楽を求め合うだけの男と女が 二人。
人間って
そんなもんじゃない。
愛し合うとか、慈しむとか、
大切に想う とか
家庭を築くとか 人生を共に歩むとか
…ああ、馬鹿馬鹿しい。
愛される喜び?
愛する喜び?
…人の、温もり?
そんなもの信じたから
あんなことになったんでしょ
もう嫌なの 懲り懲りなの
だからあたしは
あんたを傷つける
あたしを守るためだけに
…ごめんなさい
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ray - 一昨日この作品を見つけ一気読みしました。主人公の揺れる思いに胸が苦しくなります、、。これから主人公とテヨン(テンも?)がどうなってしまうのか続きが気になります。大変だとは思いますが頑張ってください!更新首を長くして待っています^^ (1月15日 18時) (レス) id: 3feffcfcf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:如月 | 作成日時:2021年1月14日 17時