遊郭物語 -新都編- 伍 (ページ7)

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二月十八日雪

今日は、忙しい一日だった。

今朝九時十二分、父が死去した。
四十八歳だった。

豪快な笑顔と屈強な体の持ち主であったのにも関わらず、結核にはやはり打ち勝つことが出来なかった。

母は悲しみに暮れ続けていた。
そのため、葬儀の準備や各所への連絡は私が執り行った。急な死にも、母以外に唯一残された肉親なのだから、まずは迅速に対応するのが筋というものだろう。

すぐに父方の祖母が駆けつけた。
てきぱきと行動する私に、
「なんて恩知らずな子なんだろうね」と
彼女は私を睨んでいた。

夕方には、大方の処理は済んだ。
私がやっと父の死を悲しむことが出来たのは、このあたりだった。

この時、どこからともなくテヨンがやって来た。

私の背中をさすってくれたことを、記憶している。なんにせよ、久々に泣いたものだからあまり覚えていない。ただテヨンは、私の隣に居続けてくれたのだと思う。

貿易会社の方は、父の弟が受け継ぐことに決まった。以前より父は叔父を後継者に指名していた。

私に遺されたのは、遊郭だけである。

つまり、明日から私が、此処の楼主だ。

正当な職では無い、と揶揄されるだろう。
都の人からは、好奇の目で見られるだろう。

大切な八の人徳を忘れた者として、
きっと同じ人間としても扱ってはくれない。

それでも、怖くは無いと自分に言い聞かせる。
ジェヒョンやヨンホたちを守ることで既に手一杯だ。自らへの批判や偏見を恐れている暇など、きっと無いだろう。そうだといい。

奇しくも、明日にはテヨンが花魁に就任することが先月から決まっていた。

先代の花魁が身請けされてから二ヶ月。
ようやく新たな看板を立てることが出来る。

私とテヨンで、新たな遊郭を創り上げるんだ。

彼ら男娼の命運は、私の手に懸かっていると言っても過言では無い。

必ず此処を都いちの遊郭に、
彼らを都いちの男たちにしてみせる。

明日から遊郭こそが、私の生きる場所になる。

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