遊郭物語 -新都編- 伍 (ページ37)

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幕間ページ37

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TY side

襖を閉じ切る。

…そこにもたれかかり、嘆息する。

窓の向こうに見えるのは、丸い月だけ。
部屋に射す唯一の灯りも、その月だけ。

深く、深く息をついて

さっきのヘチャンの顔を思い出す。

…従姉弟、なんて咄嗟に思いついた嘘を

ヘチャンは信じた様子だった。

俺たちの関係に突っ込んでくるのって、
ここじゃヘチャンくらいしか居ない。
あとは皆、関わろうともしない。

付き合いの長いドヨンやジェヒョン、ユウタにマークたちは俺とあのひとの関係を察してる。

そんなあいつらでも突っ込んでこない一面、
そんなところにも、無鉄砲に関わろうとするくらい

…ヘチャンって、本当にあのひとが好きなのかな。

気付きもしなかった。

ヘチャンやジェミンたち… あそこの六人が、あのひとの厳しい指導を受けて弱音や恨み節を垂らしている場面を何度か見たことがあったから。

…まさか、そうだったんだ。

驚いた。心底驚いた。

もし、もしも。

それが誰なのか、町の商人なのか、外国人なのか、
はたまたこの遊郭の中に居る人間なのか

それは分からないけど、予想しようが無いけど、

Aさんに想い人が出来たとして。

…その時、俺は果たして

この役目を、立場を失うのだろうか。

あのひとは、俺を

……捨てるのかな。

“人を好きになるのは自由でしょ。自分の意志で、生きてるんだから”

“俺は自分の意志で、あのひとの背中、追っかけてるんです”

そんな風に、涼しい顔して言っていたヘチャンの言葉が

頭の中を行ったり来たりする。

自分の意志で、生きる。

自分の意志で、誰かを追いかける。

…俺とは、あまりにも無縁な行動だ。
自分がどうしたいかなんて、まるで考えたことが無かった。

だって、

ああしたいだとか
彼女がそう望んでるだとか

自分の思いがどうこう、だとか

そんなの関係ないんだよ

あのひとが居るから

俺も、居る

…ただそれだけ、何も考える必要の無い単純なこと。

だけど、じゃあ

あのひとが居なくなったら

…俺も、居なくなるの？

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