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HC side
中で支度をしてるのだろう。
少しすると、案の定 俺の呼び掛けに応える声が聞こえてきて
視線の先に、今紫の裾。
見上げれば、身じろぎする程 美しい顔。
「…どうしたの、ヘチャナ」
「ヒョン…」
「珍しいね、お前が来るなんて。何かあった？」
俺は立ち上がり、テヨンイヒョンと対峙する。
…俺がずっと前、一目 見た時から
テヨンイヒョンは薔薇の花のように美しくて、触れられないような存在で。
そして、ヌナの隣に居ることを 唯一ヌナ本人から許されていた。
そんなヒョンが…
…羨ましくて、疎ましかったんだ。
俺を不思議そうに見つめるヒョンの瞳は、
純粋そうに見えて とっても空虚だ。
「…あの、ヒョン。変なこと訊いてもいいですか」
「なに？」
「Aヌナのことです」
「…楼主様って、呼びなよ。あのひと、怒るよ」
「…なんでそんな風に、全部知ってるような口調で話すんですか。ヌナのこと」
「え…」
「ヌナとはどんな関係なんですか。教えてください」
「…どんな関係って…」
困惑した様子のヒョン。
普段はあれだけ高貴な雰囲気を纏い、凛と咲いているヒョンだけれど
大きな瞳を戸惑いに揺らす姿は、いつもよりずっと幼く見える。
「なんで急に、そんなこと聞いてくるんだよ」
そうだ、その通り。
反論しようの無い疑問をぶつけられる。
俺だって分からないよ。
…気付いたら、ここに来て
なんだか必死な表情して 尋ねていたんだ。
俺の知らない世界に、ヌナを閉じ込めないでくれ。
…奇妙な絆なんかで、ヌナと繋がらないでくれ。
そんな、
誰にも言ったことのない
自分ですら 自覚した記憶の無い思いが
テヨンイヒョンに掴みかかって、
今にも溢れてしまいそうだ。
俺は、深く息をついて なんとか平静を取り戻す。
何とも無かったような、けろっとした顔で
またテヨンイヒョンを見つめた。
「…なんか変だな、と思ったんです。さっき階段で話してるところを見たのも、それよりずっと前からも… 二人の距離感が普通じゃないから、気になったんです」
「変って… …別に、なんもないよ」
「そうですか？ヌナはテヨンイヒョンと特別に親しいって、認めてましたけど」
「…楼主様が？」
その大きな瞳の問いに、頷けば
ヒョンはヒョンらしくもなく、どこか狼狽えた様子を見せた。
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作者名：如月
| 作成日時：2021年1月11日 10時
