遊郭物語 -新都編- 伍 (ページ13)

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第二場ページ13

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TY side

「…花魁道中を？」

「うん。私のために、やってほしいの」

俺が、まだ振袖新造だった頃から
俺を贔屓にしてくださっているお客様。

その肉感のある肩を抱きながら、
事を終えたあとの穏やかな会話のなかで
そんな話題が不意に登場した。

…花魁道中、か。

年に一、二度しかやらない一大行事。
たった一回のそれで、多くの人材と莫大な金が動くことになる。

俺が花魁となって五年が経った。

風格や貫禄が身に付いているのかは、果たして不明ではあるけれど
花魁として堂々と振る舞うことにはかなり自信が付いてきた。

それでもまだ、花魁道中となると緊張する。

…今の自分にどれだけの価値があるのか、
町の人々に見せつけなくちゃいけないだろ。

なんだか人間らしくないから
そういう考え方とか、取り組み方とかは

だから緊張する。
俺って、普通の人間じゃないんだなって
嫌と言うほど実感することになるんだ、花魁道中のたびに。

時に、冷たい夜風が入り込むようになった
秋の始まりの今日この頃。

彼女が甘えたそうな雰囲気を醸し出して、俺に身を寄せるから
俺も微笑んで、肩をぎゅっと抱き締める。

「…分かりました。やりましょう」

「…！本当に！？私、とっても嬉しいわ！」

「ふふっ、どんな舞台にしましょうか。…あなただけを見つめて、目指して、あなたの好きなように着飾らせた僕で、歩きますから」

「うふふっ、どうしようかしら…」

ころころと、音を立てるように楽しそうな彼女の話に耳を傾ける。

…どうしたら、お客様が喜ぶか。

どうしたら、俺自身がもっと魅力的に見えるか。

そればかりを研究してきた気がする。

お手の物、なんて言い方は嫌だけど
もはや接客という感覚すら忘れて、

俺の中には “娼夫のテヨン” という人格が

完璧に構築されているように感じる。

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