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TY side
「…行かないわよ、どこにも」
「…！」
「貴方をおいて、何処かになんて。あたし 行かないわ」
「っ…… …Aさん…」
「…テヨンは…？」
…不意に
不安そうな目をする 貴女。
どうしてなんだろう。
絶対的な権力者で 誰も貴女に逆らわない
全てを管理し、統率する者として
この上ない威厳を発揮してる
そんな貴女が 何を不安に思うことがあるんだ？
……無用な心配だよ、
それは きっと。
俺は微笑んで、
なんか 少しだけ泣きそうになりながら微笑んで
Aさんの身体を、きつく 抱き締めた。
「…何度言ったら分かりますか」
「…、」
「紛れもない、俺の本心です」
「テヨン…」
「…貴女なしで生きようなんて、考えたことがない」
「……」
「貴女が居て、俺なんです。俺が居て、貴女なんです。…… …そう、思ってくれてたら 一番嬉しいんですけど…」
「…馬鹿じゃないの、あんた」
「…Aさん」
Aさんが俺の腕を解き、
俺の肩を掴んで 身体を真っ正面に向ける。
その瞳が、どこか必死に 俺だけを見つめていた。
「…あんたが居なきゃ、あたしじゃない」
「…」
「…そうよ、絶対にそうよ。……あたしを不安にさせないで…」
「Aさん、」
「…」
「……じゃあ、いいじゃないですか、これで。二人とも幸せだよ」
「… …テヨン…？」
俺は濡れた前髪をかき上げて、
…うまく笑えてるかな。分からない。
だけど、
Aさんをどうにか安心させたくて 微笑んだ。
Aさんの細い肩を抱きしめると、
その刺激的な香りが 俺の鼻腔を惑わせようとする。
それでも、
…その奥の奥にある、
貴女の 柔らかくてまっさらな香りを
俺は感じられるよ
貴女がいくら 貴女自身を偽ったとしても。
俺は微笑んで
そうだね
まるで子供同士みたく
貴女の頬を 優しくつねって
「Aさん」
「俺を全部、貴女にあげる」
「それが俺の幸せです」
そんな風に 言ってさ
俺はまた 貴女に唇を重ねて
心から 満たされるんだ
.
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作者名：如月
| 作成日時：2021年1月11日 10時
