遊郭物語 -新都編- 伍 (ページ3)

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一月十二日雪

新年早々、また少年が売られて来た。
イ・ミンヒョンと言う、はるばる加奈陀(カナダ)からやって来た十二歳の少年だ。

まだ何にも染まっていない、世の中の汚点を一つも知らなさそうな純粋な瞳が印象的だった。
どうかこの瞳を汚さないように、注意しながら教育を行うべきだろう。その方が彼にとっても、お客にとっても商品価値が高まる。

と言うのも、彼が人気者に育てば、彼自身の借金の完済に一役買うことになる。彼が早く此処から出るためにも、きちんと指導しなくてはならない。
それが私の役目だ。

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三月二十一日晴れ

どこから調べたのだろう。
朝一番、テヨンが私に挨拶にやって来て
誕生日を祝ってくれた。

綺麗な笑顔で、花を手渡してくれた。この時期には咲かない茉莉花(ジャスミン)の花だった。
一体どうしたの、と尋ねればわざわざ父に頼み込んで海外から取り寄せてくれたのだと言う。

その笑顔を、心から愛おしく思った。

彼の成長を見守る時間が最近では一番の愉しみだ。
今年で十五歳。禿として出すまで一年。

そろそろ態度を変えねばならないこと、分かっている。嬉しさと心苦しさが同時に胸に押しかけて来た。

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三月二十三日曇り

書物を読んでいて気が付いた。
何故茉莉花の花なのだろう、と不思議に思っていたが、あれは私の誕生花だった。

居てもたってもいられず、テヨンを呼び出し
盛大に褒め、感謝を伝えた。
テヨンは照れ隠しなのか、戸惑いながらも
私に微笑んでくれた。

思惑通り、彼は日に日に美しくなっていく。
私の、愛しい少年だ。

今宵も彼を床に呼んでいる。
抱き締めるたびに愛おしさが増すようだ。
こうしていられるのも今のうちだけだろう。

せめて、せめて
次の春まではただ純粋に
彼を慈しむ自分で在りたい。

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