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JM side
「…くすぐったいよ」
「だって、触れていたいから」
「ふふっ、へんなの」
「喜んでるくせに。素直じゃないね、貴女は」
ヌナはきっと 遊郭とは無縁の人生を歩いてきたはずだった。
それが、何かの弾みで…
…こんな風に、巡り会った。
話をする限り、ヌナは頭が良い人のように思える。
ユタヒョンから聞いた噂では、どうも大名や貴族を相手にする家業を 若くして受け継いだとか。
…そりゃ、遊郭通いが出来るわけだ。
膨大な資金の源泉は、彼女自身が働き生み出したということ。
美人な上に資産も潤沢と来たら、寄ってくる男は幾らでも居るはず。
それこそ、最初に言っていたように
遊郭へやって来たのも、単なる気晴らしのつもりだったんだろう。
僕だって、一人の大切なお客様として
…ただのお客様として、最初はヌナに接していたつもりだ。
小さな手を包み込み、細い指を絡める。
僕を見上げる柔らかな笑顔が、
…心の底から愛おしくて たまらない。
他の男になんか、盗られたくない。
僕だけの貴女で、居てほしい。
「…ねえ、ヌナ。貴女に伝えなきゃいけないことがある」
「ん…？」
眼下に広がる暗い夜道を見れば、
路肩の雪は 溶け始めていた。
花街の大通を彩る、満開の桜。
もはや、見慣れたその光景も
……来年からは、おさらばなのだろうか。
「僕、」
「…花魁になるんだ」
「今度の春祭りで、お披露目になる」
そっと、目を閉じる。
ヌナは、どんな顔をしてるかな。
喜んでくれてるだろうか。
やっと、その時が来たと。
やっと、僕が一人前になって
胸を張って此処から旅立てる、その時が来たんだと。
微笑みながら、目を開けて
ヌナの頬に触れる。
ヌナは、僕を見上げた。
その瞳は、潤んでいた。
あの夜のように、
哀しみに 吹かれながら。
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まの。(プロフ) - 文ひとつひとつが美しくて儚くて世界観に完全に飲み込まれてしまい涙が止まりませんでした。素敵な作品をありがとうございます。第二章たのしみにしてます。 (2020年12月23日 17時) (
レス) id: f85dbd625a (このIDを非表示/違反報告)
みんはは(プロフ) - 初めまして。占ツクのおすすめからやってまいりました。ドキドキと儚さといろいろな感情が湧いてきました。いいお話をありがとうございます。第二幕も楽しみにしています(^^) (2020年12月22日 15時) (レス) id: bf5897c69c (このIDを非表示/違反報告)
ねね(プロフ) - とても儚く、一ページずつ進むにつれてドキドキが増していきました。まるで自分が本当にこの世界にいるような感覚になり、何度でも読みたいと思った作品でした。第二幕も楽しみにしています！ (2020年12月22日 13時) (レス) id: cf1331ef12 (このIDを非表示/違反報告)
めろん。 - 彼らの生きる世界が美しいながらもとても儚くて、読み進めていくうちに世界観にひたすら没頭し、胸が締め付けられる思いでした。とても素敵なお話でした。第二編も楽しみにしております。 (2020年12月22日 1時) (レス) id: 2ef4a3e2fe (このIDを非表示/違反報告)
ぴっぴ。(プロフ) - はじめまして。なんという唯一無二のお話でしょうか。本当にのめり込みすぎて感情移入しすぎて儚すぎて涙が止まりません。第二章とっても楽しみです。ありがとうございました。 (2020年12月22日 0時) (レス) id: 6af44f4d13 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2020年12月19日 22時
