＿ ページ39
.
「…Aちゃん、」
「うん？」
「…その、ありがとう。本当に」
「え？」
「こんなにぐずで、ドジな僕でも、呆れないで、ずっと笑いながら見守ってくれて」
「…」
「僕、どうしても緊張してしまって…。下女や楼主様を相手に裏で接客の練習をしても、いつも失敗ばかりで… こんな風に、お座敷に上がるのも、周りの皆より遅くなっちゃって」
自嘲するように、悲しく笑いながら
ジョンウくんが俯いた。
私は、体の赴くまま
ジョンウくんの大きな手に、自分の手を重ねた。
ジョンウくんは はっとしたように顔を上げて
ふるふると、首を横に振る。
「…ごめん。こんな暗い顔、したかったわけじゃなくて、えっと」
「分かってるよ。だいじょうぶ」
そんな言葉に、彼は嬉しそうに微笑んで 頷いた。
「……これまで、こうしたらいい、ああしたらいいって、色々な人が助言をくれたんだ。その通りにしよう、失敗は二度としないようにって、思い続けてきた。だけど、Aちゃんは…」
「…うん」
「…僕は僕のままでいいって、初めて言ってくれたよね」
私の手を握る彼の手に、力が入る。
私を真っ直ぐ見つめる瞳は、
もう潤んでも 震えてもいない。
ふわふわの、茶色い髪。
手を伸ばし、それに触れれば
ジョンウくんはそんな私の手を 優しく包み込んだ。
「楼主様がAちゃんを、僕の… 水揚げのお相手にお選びされたのも、分かる気がする。そして、皆が君を慕う理由も」
「ふふ、どうして？」
「…Aちゃんは、向き合ってくれるんだね。娼夫としてじゃない、“僕ら自身”と」
「だから、胸がぽかぽかしちゃうんだ」
ジョンウくんが にっこりと微笑んで
その高い声で 私の名前を呼ぶ。
長い腕を、まだ少し ぎこちなく広げる。
そんな様子がやっぱり可笑しくて、愛しくて
私は笑いながら その胸に身を預けた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 948人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「NCT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きむロン - なにこれえッち！！！やだ恥ずかしい！！！（） (2021年3月19日 10時) (
レス) id: 687bfe2f8c (このIDを非表示/違反報告)
ひかるちゃん(プロフ) - 遊郭と韓国アイドルの世界ってなんだか似てるなって思いました (2021年1月25日 2時) (レス) id: a4b03772ec (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 既視感があると思ったら3年か4年前に読んでい方の作品にまた出会えて本当に感激です泣ありがとうございます！ (2021年1月3日 3時) (レス) id: 7a2ecf4d8f (このIDを非表示/違反報告)
獺 - 焦がれるほどお待ちしておりました。再び貴方の文学に触れられると思うと眦が熱くなるような気すらします。素晴らしいあなたと、素晴らしいあなたの文学が本当に大好きです。 (2020年12月20日 11時) (レス) id: 5140f050ee (このIDを非表示/違反報告)
理沙 - 文字から伝わってくる色気が凄いです…。風景が簡単に浮かんできます。設定もそれぞれに合ってて、（特にテンちゃんのキャラ最高です笑）全員がどんな風に出てくるのか今からとても楽しみです。 (2020年12月18日 21時) (レス) id: ba6de82bf1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：如月
| 作成日時：2020年12月17日 17時
