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大きな、大きな瞳が
一点だけを見つめ、歩き続けている。
きっとその視線の先には、彼の上客が居るのだろう。
「…ふふっ、ヌナ。口開いてますよ(笑)」
「…びっくりした… あまりに綺麗で」
「うん、そうですよね。…あの、着物にある白の椿の花言葉。知ってます？」
ジェミンが“テヨンイヒョン”と呼んだ彼を見つめながら、誇らしげに微笑む。
夕陽に照らされた瞳が、やけに純真に見えた。
ジェミンからしたら、兄弟のような人なのかも。
「完全なる美しさ。申し分のない魅力。崇拝」
「…彼にこの上ないくらいぴったりね(笑)」
ジェミンが頷くと、その“彼”は
蜃気楼のように 消えていった。
ゆったりと、優雅に歩いていたはずなのに
いざ彼が姿を消すと、一連の道中が 一瞬の出来事のように思えた。
女性たちの悲喜こもごもの溜め息が聞こえてくる。
…なんだか、凄いものを見た。
心が圧倒されたまま、なかなか体に帰ってこない。
「…ジェミンも、」
「え？」
「ジェミンもいつか、…あんな風に、花魁になるのかな」
「…」
ぽつりと、私の口から溢れ出た言葉。
ジェミンは ゆっくりと瞬きして、
夕陽に その微笑みを紛れさせた。
「…わからない。僕はただ、自分のすべきことをするだけだから」
「…」
「それでも、もし。もしだよ？僕が花魁になる日が来るなら、最初の夜は貴女に捧げる」
「ふふっ、楽しいこと話してくれるのね」
「…本気だよ、ヌナ。僕、決めたんだから」
私の手を取る。
その白い肌、
橙色の 暖かな光。
ジェミンが彼自身の左胸に、私の手を触れさせた。
脈打つ心臓を、彼の息吹を 感じる。
ジェミンは瞳を閉じて、
その薄桃色の唇に笑みを浮かべた。
「…花魁がお相手するのは、ほんの数名の女性だけ」
「僕は、貴女がいい」
「…おかしいんだ、僕。ここ数週間…」
「……貴女のことしか、考えていなかった」
…耳が、赤い。
わざと、私から顔を背けるようにして
彼は私を胸に抱いた。
ジェミンの温もりと、柔らかな香り。
私はそっと、その背中に腕を回す。
理由なんて分からない。
目と目が合った、何かを感じた。
…それだけで、十分なの。
本当は私だって、わかってたのにね。
彼が途中から、嘘をつかなくなってたこと。
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きむロン - なにこれえッち！！！やだ恥ずかしい！！！（） (2021年3月19日 10時) (
レス) id: 687bfe2f8c (このIDを非表示/違反報告)
ひかるちゃん(プロフ) - 遊郭と韓国アイドルの世界ってなんだか似てるなって思いました (2021年1月25日 2時) (レス) id: a4b03772ec (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 既視感があると思ったら3年か4年前に読んでい方の作品にまた出会えて本当に感激です泣ありがとうございます！ (2021年1月3日 3時) (レス) id: 7a2ecf4d8f (このIDを非表示/違反報告)
獺 - 焦がれるほどお待ちしておりました。再び貴方の文学に触れられると思うと眦が熱くなるような気すらします。素晴らしいあなたと、素晴らしいあなたの文学が本当に大好きです。 (2020年12月20日 11時) (レス) id: 5140f050ee (このIDを非表示/違反報告)
理沙 - 文字から伝わってくる色気が凄いです…。風景が簡単に浮かんできます。設定もそれぞれに合ってて、（特にテンちゃんのキャラ最高です笑）全員がどんな風に出てくるのか今からとても楽しみです。 (2020年12月18日 21時) (レス) id: ba6de82bf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2020年12月17日 17時
