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「…ねえ。“今”のジャニだけは、私のもの、なんだよね」
「うん、そうだよ」
「堪能して、いいんだもんね。今だけ…」
私だけを見つめて、私だけを暖めて。
そんな願いが叶う場所。
一瞬、幸福で胸が満たされる場所。
そして、この花街を一歩出たのならば
無償に 切なくなる。
ほんの、腹いせで 来たはずなのにな。
少しでも、気休めになると思って。
…それが
底無し沼に堕ちていくって、こんな感覚なんだろう。
性懲りも無く、ジャニの胸に顔を埋める。
…そうだ。
もうここに居る、その時点で 私は
道徳を得た人間では無くなってしまったのだから。
“普通”でいよう、
世間体に恥ずかしくないように生きよう、
そんなの もう 要らないんだ。
ただ、本能のままに。
それで、いいんだよね。
確かめるように彼の顔を見上げれば、
その柔らかい唇が、額に触れた。
「…男娼として働いていて、一番辛いことは」
「うん？」
「身体を売ることへの罪悪感でも、俺を売り飛ばした家族への恨みでも、ここから出られないっていう絶望感でもなくて」
「…」
哀しげに微笑む。
そんなの、もう古傷になった
疼きもしないよ、と 言いたげな瞳。
思わず、ジャニを抱き締める。
ジャニは少し驚いたように、体を硬直させて
そして、ふふっと微笑んだ。
「…今みたいな瞬間が、来ることだよ」
「今？…どうして？」
「……心からの言葉も、全て営業に聞こえてしまうでしょ」
頬に触れる 大きな手のひら。
そっと重なった、唇。
柔らかな温もり。
目を、うすらと開ければ
眩いばかりの金髪に、その優しい瞳。
「…Maybe, I've fallen love with you... ha, you're my special, and precious」
「…なに？全然わからないよ(笑)」
「ははっ、分からなくていいんだよ」
「ねえ、教えてよ(笑) 何を言ったの？」
「ん〜？Aがとっても可愛いって話」
「嘘つき！」
「ははっ(笑)」
とろけるような微笑み。
子供のような笑顔。
…束の間の夢に、酔っていたい。
こんなふうに、幸せだと感じる瞬間だけを
浴びていられたらいいのに。
「…もう一回、しようか？」
さりげなく、妖しさを纏って
そう告げる唇の 艶やかさ。
とても、魅力的で
哀しい。
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きむロン - なにこれえッち！！！やだ恥ずかしい！！！（） (2021年3月19日 10時) (
レス) id: 687bfe2f8c (このIDを非表示/違反報告)
ひかるちゃん(プロフ) - 遊郭と韓国アイドルの世界ってなんだか似てるなって思いました (2021年1月25日 2時) (レス) id: a4b03772ec (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 既視感があると思ったら3年か4年前に読んでい方の作品にまた出会えて本当に感激です泣ありがとうございます！ (2021年1月3日 3時) (レス) id: 7a2ecf4d8f (このIDを非表示/違反報告)
獺 - 焦がれるほどお待ちしておりました。再び貴方の文学に触れられると思うと眦が熱くなるような気すらします。素晴らしいあなたと、素晴らしいあなたの文学が本当に大好きです。 (2020年12月20日 11時) (レス) id: 5140f050ee (このIDを非表示/違反報告)
理沙 - 文字から伝わってくる色気が凄いです…。風景が簡単に浮かんできます。設定もそれぞれに合ってて、（特にテンちゃんのキャラ最高です笑）全員がどんな風に出てくるのか今からとても楽しみです。 (2020年12月18日 21時) (レス) id: ba6de82bf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2020年12月17日 17時
