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呼吸することさえ、忘れそうだった。
冬の足音が聞こえる 熱帯夜。
長い腕、逞しい胸に抱かれて
激しく高鳴る胸を、なんとか落ち着かせる。
汗ばんだ額が、とても色っぽい。
ジャニは私と目が合うと、
私を安心させるように微笑んで また髪をかき上げた。
「ね、ジャニ」
「ん…？」
「さっきの… なんて、言ったの？」
「ああ… 知らなくていいよ(笑)」
「あれ、ジャニの国の言葉でしょう」
「うん」
「教えてよ」
「恥ずかしいよ」
「え？」
横顔を見つめる暇も無いまま、ジャニは上体を起こして
私の体が冷えないようにと 布団を掛けてくれた。
自然な仕草で、私のことを胸に抱き寄せる。
なんだか、眠たくなってしまうほど。
夢心地とはこういうことなのかな。
「…それで、聞きたいことはなんだったっけ？」
「ふふっ、大分遅くなったじゃない」
「ごめん、想像してたより盛り上がっちゃって…(笑)」
「ううん、いいの。…沢山、あるんだ」
「うん。全部、いいよ」
私の肩を、優しく抱く。
…こういう振る舞いを、西洋では“紳士的”と言うのだったっけ。
最近読んだ本に、書いてあった。
「あ、そうだ」
「ん？」
「さっきの問い、真面目に答えるとね」
「さっき…？」
「…ここの娼夫に惚れてもいいのか、って話」
…そうだった、な。
その答えが欲しくて、ここに来たんだ。
「厳密に言えば、恋愛は…ご法度ではない」
「…そうなの？」
「ああ。と言うか、よくある話だよ。俺たちの間でも、お客様を好きになってしまったって、よく話したりするし」
「へえ… それは意外だな」
「ここは限られた世界だからね。俺たちはこの花街から出ることも出来ない。女性と出会う機会なんて無いんだよ。全て、仕事だから」
煌びやか、豪華絢爛。
そう見える遊郭でも、真の姿は 鳥籠だ。
あっけらかんと言ってのけたジャニだけど、
その言葉の哀しさは 後味が悪い。
「だけど… 時に、身請けされる娼夫もいる」
「…そんな財力を持った女性がいるんだね」
「もっぱら、その娼夫は間男として暮らしていくことになるけど」
いくら美貌と教養を兼ね備えていても、
それでも娼夫は 娼夫。
世間から時には羨望の眼差しで見つめられ、崇められ
そして時には、酷く疎まれ、忍ばれる存在。
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きむロン - なにこれえッち！！！やだ恥ずかしい！！！（） (2021年3月19日 10時) (
レス) id: 687bfe2f8c (このIDを非表示/違反報告)
ひかるちゃん(プロフ) - 遊郭と韓国アイドルの世界ってなんだか似てるなって思いました (2021年1月25日 2時) (レス) id: a4b03772ec (このIDを非表示/違反報告)
さとう(プロフ) - 既視感があると思ったら3年か4年前に読んでい方の作品にまた出会えて本当に感激です泣ありがとうございます！ (2021年1月3日 3時) (レス) id: 7a2ecf4d8f (このIDを非表示/違反報告)
獺 - 焦がれるほどお待ちしておりました。再び貴方の文学に触れられると思うと眦が熱くなるような気すらします。素晴らしいあなたと、素晴らしいあなたの文学が本当に大好きです。 (2020年12月20日 11時) (レス) id: 5140f050ee (このIDを非表示/違反報告)
理沙 - 文字から伝わってくる色気が凄いです…。風景が簡単に浮かんできます。設定もそれぞれに合ってて、（特にテンちゃんのキャラ最高です笑）全員がどんな風に出てくるのか今からとても楽しみです。 (2020年12月18日 21時) (レス) id: ba6de82bf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月
| 作成日時：2020年12月17日 17時
