エピローグ ページ35
五月一日 金よう日 ハレ
すがすがしいはじまりだ。 クスリのふく作用のせいか、まだ、手がふるえるけど、字もかけるくらい回ふくした。 カノジョはまた、あたらしい人形を作ってくれた。 前のは? ってきいたらあたらしいもののほうが、はじまりにふさわしいって、おれよりオトナみたいなことをいっていた。 さすがおれの女。 おれも、つうちょうだけもってきて、カノジョといっしょになることにした。 あたらしいいえには何もないけど、これから二人のものとか、思い出がふえていくんだとおもうと、うれしい。 ちなみに、クスリはまだもってる。 ほんとにやばくなった時用にね。 また、めいわくかけたらごめんな、A
おれは日記をとじて、先に眠ると床へ就いた彼女の部屋に向かった
音をひそめて扉をあけ、廊下から洩れる光を頼りに布団へ、彼女が眠る布団へ歩み寄る
そっと腰をおろし、彼女の顔をしっかりと見つめた
付したまつ毛。 つんと上を向いた鼻。 薄くひらいた唇
至近距離で眺める彼女は、出会った当初と変わらないほどに美しかった。 それを見て、おれはようやく帰ってこられたんだと緊張の糸をほどいた
「A……」
しっかりと風呂につかって、爪を切って、汚れを落とした手をもって、彼女に触れた
長い──
長い夢でも、みていたようだ
「A…………待たせてごめんな」
そうだよ。 ずっと待たせた
だけど彼女はいつだって、おれを信じていてくれた。 だからおれも帰ってくることができたんだ
おまえがおれを見て、驚きのあまり身体を硬直させたのも、ずっとひとりで寂しかったからだよな。 いつもいつも、ひとりにさせてごめんな
でも、もう大丈夫だよ
「……もう、二度と離れないから。 ずっと一緒だよ」
恥ずかしくて、直接いえないけど
「ずっと……」
ずっと、一緒だよ
おれは誓いをたてるよう、彼女の桃色の唇に自らのそれを重ねた
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クッキングママ
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作者名:玲佳 | 作成日時:2020年4月4日 19時