Alone Together (ページ28)

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混乱の渦ページ28

「射されたときはなんにも感じなかったのに、今になって痛みだしたよ。回復した証拠なのかな。 ……うう」

「そうだよ。普通は感覚があるものでしょ？」

「そだね。 ……たしかに。普通だ」

まるで呪いのように彼の身体にはりつく痕は、痛々しいというよりも、どこか恐ろしかった

そして、恐る恐るその痕をさすってやると、彼はわざとらしいくらいすぐに落ちつきを取り戻した

「あは。 Aちゃんが撫でてくれたら、すぐ治りそう。 ……」
その先はない。細められた眼が、何度も瞬く

「Aちゃん怒った？ごめんね、ごめんね。キヨわがままいってごめんね」

なにも怒っていないのに、彼は突然わたしの脚に縋りついて、わんわんと泣いた「もうわがままいわないから。おれのこと捨てないで。ね、ね、おれが悪かったよう」

これにはわたしも困りはててしまう

とにかく、とイスからおりて、彼と目線を合わせる

「ひとりはいやだああっ」
髪を振り乱して、頬に爪を立てる彼の手を抑える

「キヨちゃん、落ちついて、わたしの顔を見て」

浅い呼吸を繰り返す彼に、無理やりに眼を合わせ、言葉をつづける

「キヨちゃん。わたしの呼吸に合わせて……息を吐いて、……吐いて。 ……吸って…………」

錯乱状態に陥った彼の涙や、唾液が脚に落ちる

汚いとは思わなかった

わたしはただ同じ言葉を繰り返した……何度も、何度も

・
・
・

「……ごめんな。おれ、また、変なっちゃって」

「いいの」
彼の頬に這った涙を、そっとはらってやる

「いきなり、わけがわかんなくなるんだよ。いろんな声が聴こえて、Aまで、──いうわけないのに──おれを非難してるような感覚になるんだよ。おまえはおれを好きでいてくれているのに、それはわかってるのに……つらいよ。ほんとに、回復に向かってるのかな？」

「向かってるよ。不安がることなんて、なんにもない。大丈夫だから……」

まぶたを腫らしながら、抱えきれない不安をこぼす。わたしは訊いてあげることしかできない。相槌をうちながら、彼の、剥きだしの上半身を抱擁した