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「いただきますっ」


「どうぞ」




彼のために作った料理たちが、彼の口内で、ようやく役目を終える




「やっぱうめー! こんな料理が食えんなんて、おれは幸福(しあわせ)だなあ」


「ふふ……大げさだね。 でも、そういってくれて嬉しい」


「ほんとだよ。 おれはAに噓はつかない」


「仮に噓ついたって、わかるよ。 キヨちゃん、すぐ顔に出るから」


「噓っ?」


「ほら、そういうところも」


「これはリアクションだから違うだろ?!」




こけた頬をふくらませて怒ったふりをする彼を見つめながら、わたしも箸をすすめる




「ちゃんとおいしいって思える。 Aの……愛情が入ってるからかな?」




こてんと首を傾げて訊いかけるキヨちゃん

そうだよと頷くと、やっぱりなあとか、おれにはわかるんだよなあとか、なにやら満足げな独り言が響いた




「キヨちゃんにはバレバレだったかな」


「バレバレだよお」




やけに間延びした、子どものようなトーンで受け答えする彼が、嬉しそうに笑う



やっぱり、笑ってる顔が素敵だな




「おかわりあるー?」


「あるよ。 いっぱい食べてね」


「うんっ」




彼の口の周りについた汚れを拭きとってから、皿をさげる「キヨちゃん、どれぐらいー?」「大盛り!」「はーい」


そうしてごはんをよそっていると、突然うしろから抱きしめられた。 戸惑いと恥じらいに、茶碗を落としてしまいそうになる「き、キヨちゃん?」


声をかけても、返事はない。 わたしはまた、れいの発作がぶり返したのだろうと、茶碗を置いて、正面から彼を抱きしめ返した




「どうしたの?」


「……なんで、おれ、ひとりにすんの? もう、ずっとひとりで耐えてたのに、……離れたくないよ。 もうお腹すかない。 一緒にいよ? もっと強く抱きしめて……」


「おかわりいらないの?」


「いらない」




彼は視界をぼかすように眼を細めてから、Aだけいてくれたらいい、と泣いた




「ごめんね。 キヨ、また困らせて。 悪いコでごめんね。 でも許してね……」


「なにも悪くないから、謝らないで」


「ほんと? Aちゃん、嫌いになってない?」


「なってないよ」




すると、彼はその場に膝をついて、また泣きじゃくった




「おれも……Aちゃんのこと、一生好きだからっ。 ずっと、ほんとにずっと……」




それから、わたしの腰に縋りつく。 肌に触れた涙の温度に、彼の生を感じた

心→←時の流れ


ラッキービデオ

クッキングママ


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設定タグ:キヨ。 , 最俺 , メンヘラ   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:玲佳 | 作成日時:2020年4月4日 19時

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