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時の流れ ページ22





彼と最後に別れた日から一週間が経った

いつ彼が来てもいいように、毎日彼の好きな料理を作っていたが、それは寂しいひとり女のごちそうにしかならなかった



洩れるため息



わたしはテーブルの向かいに彼の人形を置いて、手を合わせた「……いただきます」


そして箸を持った時、チャイムが鳴った


もしや、という期待を胸に抱きながら、玄関へ向かう。 もう一度鳴るチャイム。 ああ、間違いない


扉をあけると、そこにはやはり彼が立っていて、わたしの顔を見るや否や涙を流した「A……A……会いたかった……っ」




「おかえり。 わたしも会いたかったよ」


「死ぬかと思った……でも、生きてる。 A……」


「なあに? ……もう、また泣いて」


「だって、だって……」




以前よりもやつれた顔をしていることも、なぜかパジャマ姿で、裸足なことも、今はいい


とにかく、わたしは子どものように泣きじゃくる彼を招き入れて、その涙を拭った




「ほら、裸足で来るから、汚れてるじゃない。 シャワー貸してあげるから……」


「おれ、へんなニオイする?」


「そんなことないけど、……どうして?」


「ずっと、風呂入ってないから。 なんか、水も恐かったし……」


「恐い? じゃあ、拭くだけにしとこっか?」


「ん…………そォする」




ぐずぐずと鼻を鳴らす彼に待っているよう告げて、濡れタオルを持ってくる「拭いてあげるから、足あげて」「ありがとう」


かがむわたしの肩を掴んで、いわれたとおり片足ずつあげるキヨちゃん

タオルには土や血が付着していた。 感覚がないのか、彼は痛いとも、それに準ずる言葉も口にはしなかった




「はい、綺麗になったから、もうあがっていいよ」


「やったあ。 ありがとう!」




高いホテルに泊まった少年のように、走ってリビングへ駆けてゆく彼の背中を追う




「うまそう! おれも腹へったなァ……あ。 これ、おれの人形? すげー、そっくりじゃん」




対面に置いたキヨちゃん人形を、本人が手にとって眺める(……この間は見せなかったっけ?)


その充血しきった眼は痛々しく、またもわたしの胸を刺した




「おれもずっと持ってた。 人形同士も、感動の再会だな」
ポケットから、以前渡したわたしの人形を出して、チュ、と彼にキスをさせる


「……うん。 キヨちゃんの分も用意するから、座って待ってて」


「待つ待つ!」




そう涙袋を浮かせて笑った顔は、以前の彼そのものだった

波→←無限ループ


ラッキービデオ

クッキングママ


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設定タグ:キヨ。 , 最俺 , メンヘラ   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:玲佳 | 作成日時:2020年4月4日 19時

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