初診 ページ3
おれのことなんか知らないひとが、おれの悪口をいってるんです。 それも、いっぱい。 耳をふさいだのに、まだ聴こえてきて、夜も眠れなくなりました。 でも、朝になったら眠くなって、寝ようとしたら、また、声が聴こえてきて……
「……へ、部屋には、おれしかいないのに」
やさしそうな先生が、うんうんと頷きながらつづきを促す。 知らないひとと話すのなんて久しぶりだから、何度もどもってしまうけれど、それでも話をつづける
「だから、眠れなくって、でも、起きようとしたら身体がだるくて起きられないんです。 寝なきゃって思っても眠れないし、ずっと耳をふさいで、うとうとしかけたら、屋根にどんぐりかなんかが当たっただけで飛び起きちゃって……」
「そっかあ。 部屋に自分しかいないのに、声が聴こえたり、些細な物音にびっくりしちゃったり、不眠、不安が消えないんだね？」
「うん……」
つらい、と洩らすと、先生は深く頷いて、薬をだしとくね、といった
「薬……？ 睡眠薬とかですか？」
「うん、それもあるけど、抗不安薬もね。 精神安定剤……っていうと恐いイメージがあるけど、不安や緊張を取り除く薬と思ってくれていいよ」
おれは、このいいようのない気持ちがなくなるならと、それを快諾した「わかりました……ありがとうございます」「用法用量を守ってね」
金を払って、処方された薬。 普通のとこみたいに、下に薬局があって、そこでもらうとかじゃねェんだ。 特殊だからかな。 どうでもいいけど
五〇〇〇円とちょっと。 情けない。 少し話を訊いて、薬だされただけなのに。 はあ、おれはなんでこんなところにいるんだろう
ぼうっと床を見つめていると、先生に名前を呼ばれた「はいっ」
先生は一瞬眉を寄せて、またおれの名前を呼んだ
「はい？」
「
「はい…………」
思うだけ。 そう思いながら、おれは立ちあがった
「それじゃ、ありがとうございました」
「はい、お大事に」
まあ、でも…………
これで治ればいいなっ
おれは駄菓子を買ってもらった子どものごとく袋を鳴らしながら、帰路へついた
ラッキービデオ
クッキングママ
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作者名：玲佳 | 作成日時：2020年4月4日 19時
