休息 ページ25
＊
カーテンをしめて、布団を敷いて、彼の手をひく
「おいで」
「……A、」
「なあに？」
かゆいのか、キヨちゃんはパジャマの上から二の腕を掻きながら、身体を横たえた
「おれが寝るまで、どこにも行かないで」
「行かないよ。 寂しがり屋のキヨちゃんが、泣くからね」
「うん。 泣くよ、ほんとに」
既に眼の裾を濡らしている彼に苦笑しつつ、狭い布団で身を寄せる
腕をのばして、へんに脂ぎった髪を撫でてやると、彼は猫のように眼を細めて、ふふふと笑った
「……Aちゃん」
「んー？」
「おれね、病院行ってたの」
わたしは、さして驚きはしなかった。 薬を飲んでいるといっていたのだし、大方それの延長だろうと耳を傾けた
彼が話をつづける
「でな、おれ、薬やめたいっていったんだよ。 したら先生が、その前に入院しろっていったんだよ。 まあ……もう、半強制的に」
「それで、一週間そこにいたの？」
「そう。 しかも、刑務所みてェなとこ。 時計もなくってさ。 寝て起きても、今が朝か夜か、何日目なのかもわかんねェし、知らん間に薬は打たれてるしで、嫌んなったよ」
「えっ」
わたしは彼の発言に生じた
「おれも思ったよ。 薬やめたいって、だから入院もしたのに、打つんかよって……はは。 あいつら関係ねェもんな、おれが薬漬けになってぶっ壊れようが」
「うん……違う病院で診てもらったほうがいいんじゃないの？」
「そうだねえ……」
眼をとじて、深く息をつく「……どこでも一緒だろうけど、次、おれが死なずに起きられたら、そうしようかな」
自嘲気味に笑って、眠くなってきたな、とあくびを噛みころすキヨちゃん
「わたしを置いて行かないでよ」
「はは。 冗談だよ……ひとりになんかしないから」
そういった彼が、やけに儚く見える
「今なら、恐い夢も見ないで済みそうだな……おやすみ、Aちゃん……」
「おやすみ……」
少しして、彼の深い寝息を聴き届けてから、わたしは布団を出た
ラッキービデオ
クッキングママ
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作者名：玲佳 | 作成日時：2020年4月4日 19時
