【陣内智則】狂同生活【短編集】 (ページ2)

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独り占めページ2

久しぶりに友人と出かけて

家に帰ると、仕事で遅くなると言っていた陣内さんもすでに帰宅していた

ただいまと告げ、靴を脱いでいると、自室にいた彼が玄関までやってきた

「あっ。陣内さん、ただいま帰りました。陣内さんも、今日は早かったんですね」

「いや？これでも遅いほうや。俺も……お前もな」

靴を脱ぎ終えたわたしの手を引いて、陣内さんが乱暴な抱擁(ほうよう)をする。ショルダーバッグが肩からずれ、床に落ちる。付属のチャームが大きな音を立てた

「じ、陣内さん？いきなりどうしたんですか……」

「……えらいおしゃれして行ったんやなあ」

「あ……ひ、久々のお出かけだったので──」

「この服も、靴も、カバンも、メイクも、香水も……ぜんぶ俺が嫌いなやつや」

身体を離して、細い眼が睨みつける。大好きな陣内さんにそう言われ、わたしはその場にくずおれた

そして彼もまた腰を下ろし、視線を合わせた

「どっれも似合(にお)うてへんわ」

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「はよ入らんかい」

服を破り裂く勢いで丸裸にされ、浴室に押し込まれたわたしは、問答無用で彼に全身を洗われた

まだお湯にもなっていない、ただの冷水をわたしにかけながら、彼が口を開く

「女の子と遊ぶときでも肌は出すな」

「……そんな、」

そこに口を挟むと、飛んでくる平手打ち

冷たい水を浴びているのに、頬がひりひりと痛む

視線を上にやると、そこにはとても彼女を見る眼つきではない、冷たい表情(かお)をした男がいた

「ええな？ Aちゃんええ子やから、言うこと訊いてくれんな？」

「…………はい」
それ以外の答えはない

「よっしゃ」

途端、目尻に笑いジワをはしらせた彼が、そっとわたしを抱きしめた。着衣したままの彼の洋服が、わたしの身体に付着する水を吸い取ってゆく

「途中で誰に見られるかわからんからな……メイクも薄ぅしてや。香水も振ったらアカンよ。カバンも靴も普通のにして、ええな？」

「……はい」

水びたしでも、わたしが泣いていることは声と眼を見ればわかったはずだが、彼はそこには一切触れず、ただ都合よくわたしをねじ曲げた

「お前に触ってええのも、肌見てええのも俺だけや」

陣内さんがシャワーを止め、頬に手を添える。そして首を傾け、キスをした──わたしを窒息させる、苦しいキスを

(しゃーないやんな。こんな好きやねんから)