支度 ページ5
「そろそろごはん食べよぉ」
気がつくと陽が暮れていた。 いや、正確にはもう少しで完全に暮れる、といったところだ。 いわゆる黄昏時
彼女との時間が、どんどん削れていく。 ふたりだけの世界が、現実の中に消えていく
Aは乱れた服をかんたんに整えて、台所へ向かった。 服の隙間から覗くおれのキスマーク。 もっと見えるところにつけなきゃね。 どこからだれが見たって、ひと目でわかるように
……なあ、A。 おまえは、おれがこんなことを考えてるって知ったら、いったいどんな顔をする?
おまえを取り巻く世界に嫉妬ばかりして、ひとりでいじけては、へんな方向に愛をこじらせてしまう、ほんとのおれを知ったら……
いや、おれは信じてるよ。 きっとおれがどんなだって、おまえは受け入れてくれるって──ああ、もちろんおれもだよ。 おまえのすべてを受け入れるつもり。 おまえにどんな過去があっても、嗜好があっても……仮に元・男だとしても、今と変わらず愛せる自信があるよ!
……と、きみの背中にテレパシーを送ってみる
気づかないよね。 当然
まあ、いっか。 気づかなくたって。 ほんとのおれを知らなくたって。 そのほうが、お互いにとって平穏なら
「イケの好きなごはんにしてあげるねー」
「ありがとー」
愛してるよ。 おれだけの女神さま
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作者名:玲佳 | 作成日時:2021年8月14日 2時