1. 再開の春 ページ1
『ほら、見て!
そんなメイク濃いのAちゃんだけだよ?』
さくらが舞い散る中、イタズラまじりに隆二がそっと呟いた。
「いいじゃん!だって入学式だよ、隆二 ! 」
4時起きで今朝張り切って頑張った。
隣にいるのは、幼なじみの今市隆二くん。
隆二とは保育園に入ったくらいの時から
ずっと一緒なんだ。
もう1人幼なじみがいたみたいだけどそれは忘れちゃってうまく思い出せない。
今日は緑ヶ丘高校の入学式。
合格した時は同じ中学から来た子はほとんどいないと思ってたから隆二が同じ高校でホッとした。
隆『入学式遅れるよ。A急ご』
隆二は走り出したと思ったら、急に立ちどまった。
「どうしたの、隆二?」
隆『ん』
何だろ?と思った瞬間、隆二の手が伸びてきた。
隆『ねぇ、Aちゃん手ぇ繋がない?』
そう言って隆二は、いつもとは違った優しい笑顔で振り向いた。
手…繋ぐの?
ダメだよ、こんなところで。
みんな見てるし…。
案外私が思ってる以上に隆二はモテる。
いや、モテるどころじゃない!
中学では毎日のように下駄箱の中に入っている何十通ものラブレター。
バレンタインなんて、本命チョコばっかしもらって、私が隆二を好きな子たちの
チョコレート窓口になったことだってある。
困ったままうつむいていると
『Aちゃん』
名前を呼ばれて見上げると、
隆二はまだ、笑顔のまま。
この笑顔に負ける女子とか多いんだろうな…
どうしようか戸惑っていると、
隆『早く、早くっ』
そんな顔で見つめられたら、断る女子なんてこの世界にはいないよ、きっと。
隆二を好きな子たちには申し訳ないけど…
遠慮がちに隆二の手をそっと握った。
「いいよ、行こう!」
隆二に手をギュッと握り返された。
人ごみにのまれないよう、私も必死になって隆二の手を強く握った。
途中、周りからの視線が少し気になって、
振り向くと女子たちみんな隆二を見てる。
本当に隆二ってモテる。
10人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:yuka(’-’*)♪ | 作成日時:2018年3月15日 15時