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久しぶり ページ7

「ごめん、お待たせ」


そう言って出て来たのは、正真正銘、初恋の相手のA。


「ううん、大丈夫」


コンビニ前のベンチに腰掛ける。

涼しい風が吹くなかで、俺は話し出せないままだ。


「史くん、頑張ってるんやね」


先に話し出したのは、意気地なしの俺ではなく、Aだった。


「まあ、ぼちぼち」


結果がばりばり出ているわけではないから、なんだか恥ずかしい。

それでも、Aは笑っていた。


「Aは、まだ野球好きなん?」


年頃の女子では珍しく、Aとは野球の話で盛り上がっていた。

すると、Aは少し悩んでから答えた。


「見てるけど、ルール忘れてもうた」


そう苦笑している様子からして、冗談ではなさそうだ。

そして、星の綺麗な夜空を見上げながら呟いた。


「忘れっぽくなったなあ」


Aは、割と困っているみたいだ。

俺も、しっかりしていた学生時代からのギャップに驚いている。


「忘れっぽいのに、俺のことは覚えてたんや?」


偶然じゃないのなら、嬉しい限りだ。


「うん、あれより前やったから」


「あれ、って?」


含みを持つような言葉の意味を尋ねると、慌てたようにそれを隠す。


「ううん、なんでもない。阪神で活躍してるやろ? 」


やから、と笑うAだけど、俺は隠し事が気になって仕方がなかった。

でも、Aが話さないのなら聞く必要もないと、深くは考えないようにした。


しばらくして、Aが腕の時計を見る。


「あ、もう日付が変わるわ」


嬉々としてカウントダウンをするAは、昔とひとつも変わらないように見えた。

ふふ、と笑うけど、なんとなくくすぐったい。


「送るわ」


と、ベンチから離れると、Aは


「いいよ、家、すぐそこやし」


そう言って、家があるのであろう方向を指差す。


「じゃあ! あ、またのご来店をお待ちしております」


とおどけて、でも、どこか逃げるように帰っていった。

Aの背中が見えなくなるまで手を振り、そのあとに俺は失態に気づいた。


「……あ、連絡先聞いてない」


楽しい出来事の後には、やはり悲しい出来事があるのだな、と身にしみて感じた。

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設定タグ:プロ野球 , 阪神タイガース , 北條史也   
作品ジャンル:恋愛
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はなつー(プロフ) - 花蓮@carploveさん» おー!お疲れ様です!次は私がテストだ笑 あ、新作の短編集も作ったんで、良ければどうぞ!(宣伝笑) (2018年5月27日 21時) (レス) id: 75f8f2fbcb (このIDを非表示/違反報告)
花蓮@carplove(プロフ) - はな!テスト終わってようやくこれました笑完結おめでとう!毎話毎話楽しく読ませてもらってました。お疲れさん(^o^) (2018年5月27日 20時) (レス) id: 9ae88586f0 (このIDを非表示/違反報告)
はなつー(プロフ) - 花蓮@carploveさん» そうです!頑張るよお!^ ^ (2018年4月22日 17時) (レス) id: 75f8f2fbcb (このIDを非表示/違反報告)
花蓮@carplove(プロフ) - お、北条くん落ちだ!頑張ってね(*^^*) (2018年4月22日 17時) (レス) id: 9ae88586f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はなつー | 作者ホームページ:プロ野球  
作成日時:2018年4月22日 13時

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