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話し合い ページ22

満面の笑みを浮かべるA。

面食らった表情の俺。


「ふふ、びっくりした?」


「びっくりするわ!」


泣いていたことが恥ずかしくて、キレ気味に返してしまう。

それでも、やっぱり心配の気持ちの方が大きかった。


「大丈夫なん?」


「うん、まあね」


そう言って、Aは俺から目線をそらした。いや、絶対大丈夫じゃないし。


「ごめんな、黙ってて」


うつむきがちに言うA。


「ああ、まあ、うん」


たしかに話して欲しかった。だけど、ここでそれを言うわけにもいかずに、曖昧な返事をした。


「聞いてもらってもいい? 私の病気のこと」


俺の聞きたかった言葉が、Aから放たれた。


黙って頷くと、Aはにっこり笑って話し出した。



そして、たくさんのことがわかった。


Aの病気はとても珍しいらしく、治療に手間取っているということ。

その病気を治す薬はいくつもの副作用がある。例えば、忘れっぽくなるとか、髪が抜けてしまうとか。


「野球のルールを忘れたのも薬のせい、ショートに髪を切ったのも薬のせい。ふふ、薬に支配されそう!」


と、茶化して笑っているけど、その瞳は笑っていなかった。


「A……」


無理をしているAを、安心させることが出来ない自分に腹が立つ。


「もう、そんな顔しんといてや! あ、でもな」


逆に俺が慰められる。そして、Aはなにかを思い出したようだ。


「絶対に史くんのことは忘れへんから! 二度とな? あと、本格的に治療することになったら、もうここには来んといてほしいねん」


忘れない、そう言われて喜んだのも束の間。来ないで、と突き放された。悲しい。

あまりの悲しさに言葉を発せないでいると、Aは焦ったように口を開いた。


「あ、いや、なんというか、治療で見るも無残な姿になると思うから……。それを史くんには見られたくなくて……」


Aは頰を赤らめて、口ごもっている。

その様子から、言いたいことはなんとなくわかったし、期待もした。だから、少しからかいたくなって、俺は言う。


「ん? どういう意味?」


「乙女の事情! うるさい史くん!」


と、一蹴。


少し肩を落として帰ろうとすると、呼び止められた。


「まだ、治療は始まらへんから、ちょくちょく来てくれへんかな? あ、無理ない程度に!」


「もちろん」


少しでも、Aと過ごせる時間を増やしたい。


愛しくて仕方ないAでも、病気を患っていることに変わりはないのだ。

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設定タグ:プロ野球 , 阪神タイガース , 北條史也   
作品ジャンル:恋愛
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はなつー(プロフ) - 花蓮@carploveさん» おー!お疲れ様です!次は私がテストだ笑 あ、新作の短編集も作ったんで、良ければどうぞ!(宣伝笑) (2018年5月27日 21時) (レス) id: 75f8f2fbcb (このIDを非表示/違反報告)
花蓮@carplove(プロフ) - はな!テスト終わってようやくこれました笑完結おめでとう!毎話毎話楽しく読ませてもらってました。お疲れさん(^o^) (2018年5月27日 20時) (レス) id: 9ae88586f0 (このIDを非表示/違反報告)
はなつー(プロフ) - 花蓮@carploveさん» そうです!頑張るよお!^ ^ (2018年4月22日 17時) (レス) id: 75f8f2fbcb (このIDを非表示/違反報告)
花蓮@carplove(プロフ) - お、北条くん落ちだ!頑張ってね(*^^*) (2018年4月22日 17時) (レス) id: 9ae88586f0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はなつー | 作者ホームページ:プロ野球  
作成日時:2018年4月22日 13時

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