へっぽこ男子の再・初恋

試合 ページ11

結局、どの席を選んだのだろうか、Aは。

なんて、考えていた。

その中でホームランを打った。

打席に集中してないことが恥ずかしくて仕方ない。


「北條選手、今シーズン一号のホームランです！」


とか、テレビ中継で言われているのだろうか。

Aが来てるのは今日だ。

俺のホームランを見ていたり、するのだろうか。


そして、俺のホームランが決勝点となり、タイガースは勝った。


「放送席ー、放送席ー。今日のヒーローは、今シーズン一号のホームランが決勝点となった、北條選手です！」


「ありがとうございまーす」


帽子を外して、会釈をする。

俺の一言ひと言に、球場が湧く。

それが少し気持ちよかった。


六甲颪が流れる中で、リリーフカーに乗って、ファンに手を振ったり、会釈したり。

問題が起きたのはそのときだ。

一塁側から声が聞こえた。


「史くーん！ かっこよかったよー！！」


あんなに小さい体から、どうやって声を出しているんだ。

Aの声は、きっと、反対側の三塁の方にも聞こえていただろう。

俺はぎょっとして、思わず目をそらした。

周りのファンも、なんだなんだとざわついている。

Aには悪いけど、今はただの熱狂的なファンに成り下がってもらおう。


本当は嬉しくてうれしくて、にやついていただなんて、Aには絶対に言わない。

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