怪談-48話 ページ49
寧々ちゃんが保健室にいるとの一報を受け、僕達は足早に向かった。
「やっしろー!!」
花子くんが勢い良く彼女を抱きしめる。
良かった。先生を疑っていたわけじゃないけど、無事に境界から元の世界へ戻れたという事実にほっとする。
「花子くん……Aくん…」
だが、何やら寧々ちゃんの様子が可笑しい。何処と無く元気が無い。
心配になって近寄る。
「!」
突然のことに驚きが隠せない。花子くんと共に寧々ちゃんに抱きしめられた。
「よーしよしよし」
隣で花子くんが彼女の頭を撫でている。
余っ程怖かったのだろうか。彼女の表情はここからじゃ見えない。そっと背中をさすってあげることしか僕には出来なかった。
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その日の夜、僕は相も変わらずこの部屋で彼を待っていた。
同じ景色、同じ部屋。何もかもが変わらない、変わることの無い僕の部屋。
変化が無いことは退屈でつまらないもの。刺激を求めて人はその空間から飛び出そうとする。
だけど、ふとした時にその退屈が恋しくなる。目まぐるしい刺激の中ではその退屈が必要なのだ。
「あまねくん、君はどうして死んじゃったの…?」
彼にとっての退屈に僕はなれているだろうか。物語の中で僕は存在しない。だからこそ、こうして僕が彼をここで待つことが救いになれたなら…。
『コンコンコン』
…部屋の扉が数回ノックされる。
「誰…?」
返事はない。あまねくん?
いや、彼なら自分でこの部屋に入ってこれる。
なら、司くんかな?
『コンコンコン』
再びノックの音が響いた。
…違う。彼でもない。
何か、とてつもなく嫌な気配がした。
『ふー……ふー……』
ドアの向こうに得体の知れない何かが僕の動向を見ている。
「!」
一向に返事を寄越さない僕に苛立ったのか、そいつは荒々しい音を立ててノブを回した。殴るように扉を叩いてはを繰り返し続けている。
恐怖で体がすくむ。手を口に当てずっと息を潜め続けた。見つかってはいけない。奴に見つかれば殺される。
とてつもない殺意が全身を包み込む。禍々しく、それでいてとても純粋な殺意。
暫くすると扉の向こうの気配は消えた。そして、あたりは静寂を取り戻した。
「はぁっ……はぁ……はぁ…」
無意識に止めていた息を吐き出す。深く、深く深呼吸を繰り返す。
なんだったんだ、今のは。明らかに僕へと向けられた負の感情。
「っ…花子くん…。」
寒い。
自身の腕で包み込むようにその場へと蹲った。
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イロハ(プロフ) - thirdさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです^^*更新、頑張ります! (2021年2月10日 13時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
third - ヤベー!メッッチャお上手ですね!最高すぎる…続きめっちゃ気になります…応援してます! (2021年2月9日 20時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
イロハ(プロフ) - コメントありがとうございます!これからも頑張ります(´˘`*) (2020年11月23日 17時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
猫築かなめ - 面白いです!夢主くんの過去や普、花子くんとの関係が気になります!更新頑張ってください (2020年11月23日 11時) (レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イロハ | 作成日時:2020年11月19日 11時