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怪談-39話 ページ40

「……会いたかった。」



一日だけ、あまねくんではなくつかさくんが来た。その間あまねくんは何をして何を考えていたのか。僕にとっては知る由もなかった。



だけど、ほんの少し会えなかったことを彼がこんなに寂しく思ってくれていたなんて思うと凄く嬉しい。



それだけ僕が彼にとって心安らぐ存在であるならば、とても満足だ。



……ふと、思うことがある。



僕はこうして生前の花子くんと会話ができている。彼がなにを思って生きているのかは知らないけど、少しでもこの部屋が彼の居場所であり、心安らぐ場所であるならば、せめてでも現実を忘れられるようにと彼について聞くことをやめていた。



あまねくん自身が話そうと思ってくれるまで、僕からは何も聞かないようにしていた。



だけど……この学校では彼は七不思議の怪異だ。それは彼が何かしらの原因で死んでしまったということだ。



それが指すのは、僕じゃ彼を救えなかったという事実。




彼は死んでしまう。その結末を僕は知っているのにも関わらず、今もこうして何も聞かず、見ようともせず、彼の問題を、傷を、彼自身を、見殺しにしようとしているのではないだろうか。



果たしてそれは本当に優しさと言えるのだろうか。



だからあの時寧々ちゃんが図書館へ誘ってくれた時、迷ってしまった。



花子くん自身が僕らに話そうとしてないのに、無理やりそれを知ろうとしてしまってもいいのだろうか。



でも彼女は相変わらず真っ直ぐだった。その眼差しで見詰められると、なんだか僕の心の底まで見透かされているような気までした。





いつの間にか僕の胸の中で泣き続けていた彼は、疲れたのか眠ってしまっていた。


そんな彼の頭を優しく撫でる。



彼が泣いているのはもしかしたらつかさくんが関係するのかな。やっぱりこの様子じゃ無理やり鍵を取られたのだろうか。そんな風に考えてしまう。


「……」



本当にこうやって見るとただの男の子だ。生きているあまねくんも死んでいるあまねくんも……唯の子供と変わらない。



『もう、どこにも行かないって決めたから。』



あの時の彼の姿が蘇る。悲しそうな笑みを浮かべて彼はそう言った。



「……僕はいつだって君の味方だから。」



そっと彼の頭にキスをする。
その後僕は満足そうに窓の外を眺めた。





腕の中にいる彼の耳が赤く染っていることなんて露も知らずに。

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イロハ(プロフ) - thirdさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです^^*更新、頑張ります! (2021年2月10日 13時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
third - ヤベー!メッッチャお上手ですね!最高すぎる…続きめっちゃ気になります…応援してます! (2021年2月9日 20時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
イロハ(プロフ) - コメントありがとうございます!これからも頑張ります(´˘`*) (2020年11月23日 17時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
猫築かなめ - 面白いです!夢主くんの過去や普、花子くんとの関係が気になります!更新頑張ってください (2020年11月23日 11時) (レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イロハ | 作成日時:2020年11月19日 11時

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