怪談-35話 ページ36
なんだろう。凄く嫌な気がする。
「……君は、」
花子くんを見るその目が異様な雰囲気を放つ。冷たくて凍えそうな程に。
屋上で寧々ちゃんが愛しの先輩について話しているところだった。相変わらずひとりの世界に夢中で彼の存在に気づかなかった彼女に彼は微笑みかける。
写真で見たけどやっぱり実物は確かにイケメンだ。王子様なんて言われるのも頷けるよ。
そう思った時だった。
弟である光くんや寧々ちゃん対して向けられる眼差しは温かかったのに対し、僕の隣にいる花子くんに向けられたのは真逆のものだった。
つかさくんとはまた違った酷く冷たい視線。その後僕の方を見た時には、その瞳は驚きに満ちた。
「……君、名前は?」
「……榊Aです。」
「Aくんね……」
少し考えるような仕草をしたあと光くんを連れて屋上から出ていった。
「あ!源くんと源先輩……同じ!」
今になってやっと寧々ちゃんはあの二人が兄弟であることに気づいたようだ。
「遅いよ。」
--------------------
「わかったよ。好きにしなさい。」
輝兄にチャンスを貰えた。何がなんでも花子は悪いやつじゃないって証明しねぇと……!
去り際に兄ちゃんは後ろを振り返った。どうしたのだろうと思い首を傾げていると、少し考えた素振りをした後おもむろに口を開いた。
「……Aくんって言ったかな、彼」
「!…A先輩のことか?」
出会った時はからかってきてムカつくやつだと思ったけど、笑う顔は柔らかくて直ぐに良い奴だということがわかった。
優しくて、案外照れ屋で……
なのに、死者と同じような気配がする。
ミサキ怪談の時に言いかけていたこと。どうしてA先輩からは生者の気配は微かにしかしないのか。
普通の人間とは思えない。だけど怪異かと言われるとそれもよく分からない。
「……あの子は生きている。だけど同時に半分死んでいるんだ。」
輝兄の言っていることは分からない。だけど、人に危害を加えるようなら直ぐに祓えと言われた。
祓えつったって……一体どうやって。
怪異とは違って彼は生きている。恐らく。なのにそれを一体どうやって祓えというのだろうか。
「A先輩……」
あの優しい笑顔が脳裏に浮かぶ。
こうなったら何がなんでも、花子とA先輩について調べてやる。そう意気込んで俺はその場を後にした。
89人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イロハ(プロフ) - thirdさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです^^*更新、頑張ります! (2021年2月10日 13時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
third - ヤベー!メッッチャお上手ですね!最高すぎる…続きめっちゃ気になります…応援してます! (2021年2月9日 20時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
イロハ(プロフ) - コメントありがとうございます!これからも頑張ります(´˘`*) (2020年11月23日 17時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
猫築かなめ - 面白いです!夢主くんの過去や普、花子くんとの関係が気になります!更新頑張ってください (2020年11月23日 11時) (レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:イロハ | 作成日時:2020年11月19日 11時