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怪談-25話 ページ26

「Aくん……?」



彼女の体を優しく抱きしめる。



「仕方なかったんだよ。」


「え……」



葵ちゃんが人形になったのは必然だったんだ。君のせいじゃない。


「でも……でも……」


涙目の彼女が求める言葉は分かってる。きっと大丈夫。助かる。そんな言葉を僕に期待している。


だけど、口先だけの希望は嘘だ。その嘘が余計に彼女を傷つけてしまう。



涙を流し続ける寧々ちゃんは弱々しくて、いたたまれない。これ以上、傷ついた彼女を見ていたくない。



それならいっそ……僕が──



「駄目だヨ。」



顔を上げると少し微笑んだ花子くんがいた。



「諦めるの?その子はまだ死んでない。」



寧々ちゃんの目に希望が戻る。



「ここは生と死の狭間にある世界。ここでは何も生まれない代わりに、死ぬことも無い。生と死が存在しない場所では諦めが悪いやつが最強なんだよ。」



--------------------



寧々ちゃんは居ない。



勢い余ってなんでもやるっ!なんて言ってしまったがために花子くんに境界の底まで落とされてしまった。



そっと覗き込んでみたが底なしの奈落にしか見えない。大丈夫かな、寧々ちゃん。



「サカキ。」



振り向くと、花子くんは怒ったような、悲しんだような表情をしていた。



「……それじゃ誰も救えない。閉じ込めて無かったことにしても何も変わらない。何も解決しない。」




そう言って直ぐに彼は光くんの元へ向かって行った。対する僕は座り込んだままその姿を見送ることしか出来なかった。



「……解決しようとするから辛いんだよ。」



やっと絞り出せた声は思ったよりも弱々しかった。



「立ち向かおうとするから傷つくんだ。それならいっそ、無かったことにすれば……」




そうだ。僕だって、彼女のように誰かを助けようとしたんだ。必死にもがいた。斧を片手に必死に戦った。



だけど、駄目だった。




『こうなったのは全部お前のせいだ。お前が……弱いせいだ。』



脳裏に響く男の声。やはり、聞いたことのある声。ずっと昔から知ってる。



「誰だ……お前は一体誰なんだ。」



返事はない。



その変わり、目の前にまた同じ斧が横たわっていた。




「……」



ただ願うことはもう誰も傷ついて欲しくない。それだけなんだ。

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イロハ(プロフ) - thirdさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです^^*更新、頑張ります! (2021年2月10日 13時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
third - ヤベー!メッッチャお上手ですね!最高すぎる…続きめっちゃ気になります…応援してます! (2021年2月9日 20時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
イロハ(プロフ) - コメントありがとうございます!これからも頑張ります(´˘`*) (2020年11月23日 17時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
猫築かなめ - 面白いです!夢主くんの過去や普、花子くんとの関係が気になります!更新頑張ってください (2020年11月23日 11時) (レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イロハ | 作成日時:2020年11月19日 11時

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