怪談-24話 ページ25
ツー、ツーと無機質な音が響く。ガチャりと受話器を置いた花子くんは青ざめる僕たちに笑顔で言ってのけた。
「ただのご挨拶だよ。」
七不思議同士、それぞれ面識があったんだ。死んでからも同じ組織とか会社とかみたいに、何かと面倒そうだな。
それから僕達は七不思議の力の根源である神の依代といった弱点を目指して歩みを進める。
やたらと張り切った花子くんとは打って変わって、僕達生身の人間は頭上に続く途方もない階段にクラクラと目眩を覚えた。
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何とか最後の納品を終え、扉をくぐった先にいたのは……
「ひでー……」
ムキムキな体をお持ちになったコケシ。いや、あれは僕達が納めた体の集合体。
途中から何がなにやら分からなくなって完成像を見て初めてあー、こんなもの選んだなーって感じ。正直言ってめちゃくちゃ怖い。
「今まで見てきたものとは全然違うわ!」
目を輝かせてうっとりとそのムキムキこけしを見つめる女性。ついさっき現れたこの彼女こそが、みさき階段七不思議二番目の張本人だということはきっともうみんな気づいてる。
「……っ!」
ふとこの境界の周りを見渡す。そこで目に入ってきたのは、あまりにも多い制服を着た少年少女達の体。
「ぁ……、」
体が思うように動かない。先に見た残骸と交互にフラッシュバックする。血に汚れた床と手に納まった赤い斧。
大丈夫。
何度も繰り返し頭で唱える。
少し離れた所にいる花子くんを見ていると段々と気持ちが落ち着いてくる。
必死に意識を現実に戻しながら、ちらりと横を見ると恐らく、僕と同じように、いやそれ以上に顔を青ざめさせた寧々ちゃんが居た。
倒れた僕たちの作り上げた人形を見下ろしながら、七不思議二番目は寧々ちゃんに残酷な結末を伝える。
葵ちゃんの体を抱き寄せ泣きじゃくる彼女の後ろに巨大なハサミが迫った。
「先輩っ!!」
鈍い金属音が轟く。
「俺の腕がぁー!!」
ふわふわとした素材に代わった光くんの腕はまるで綿が詰め込まれた人形のようだった。
「寧々ちゃん……」
花子くんと光くんが離れて彼女と戦っている。
それを遠目に未だ涙を流し続ける寧々ちゃんの傍に座って背中を摩った。
「Aくんっ……葵が……」
「……まだ、」
もしかしたら、人形になっただけなら、葵ちゃんはまだ生きてるのかもしれない。
まだ、助けられる。
声は出ない。
希望を持った後の絶望は途方もない物だと僕は嫌という程知っていたから。
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イロハ(プロフ) - thirdさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです^^*更新、頑張ります! (2021年2月10日 13時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
third - ヤベー!メッッチャお上手ですね!最高すぎる…続きめっちゃ気になります…応援してます! (2021年2月9日 20時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
イロハ(プロフ) - コメントありがとうございます!これからも頑張ります(´˘`*) (2020年11月23日 17時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
猫築かなめ - 面白いです!夢主くんの過去や普、花子くんとの関係が気になります!更新頑張ってください (2020年11月23日 11時) (レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イロハ | 作成日時:2020年11月19日 11時