戯言2-7 ページ8
普通の部屋。何の変哲もない、ただの部屋。
「意外やな。予想してたんとえらい違いや。」
もっと、動物の死骸とかそういう物が壁一面に飾られているかと思っていたがまんまと裏切られた。
服部は壁に置かれた本棚に並べられた漫画を見ている。
Aは机の上に置いてあったいかがわしい本について蘭達に怒られていた。本人は全く悪びれていない様子だ。
普通。余りにも普通すぎて普通じゃないと思うのは俺だけだろうか。
服部に聞くも俺の考え過ぎの一点張り。主に例の組織の情報が掴めない等のストレスが強かったから体の疲れも溜まってる。
だが、休む訳にはいかないのだ。これは俺だけの問題じゃない。早く何とかしないと、Aにさえ何らかの方法で俺の正体がバレてんだ。
世間では工藤新一は死んだことになっている。それに、アポトキシン4869が幼児化させる効果があることも知られていない。
不幸中の幸いがいつ無くなるかも分かったものじゃないのだから。
✯
「じゃあ僕は風呂に入ってくるね。」
そう言ったAを笑顔で見送る。
俺だけ無理を言ってこの家に泊まらしてもらうことにした。
勿論、この機会にAの謎を暴くために。
「Aの事が知りたいの?」
彼の母親ならばずっと一緒にいるのだから十分なヒントを得られる筈だ。
「あらあらあら。……惚れちゃった?」
あの独特な笑い声で、少女のようにあどけない表情をしてそう問いかけてくる。
必死に否定するも聞く耳は持たない。こういう所は本当に親子なんだと思わされる。
「あの子はね、昔っから命というものに関心を持っていたわ。異常な程に。」
小さな生き物から徐々に大きなものまで。だけど、そのちっぽけな命を奪うことはしなかったわ。
「父親が阻止したから。」
「お父さんが……?」
空き地でいつも怒っていたわ。命を粗末にしちゃいけないって。皆、同じ生き物なんだからって。
『皆同じじゃ詰まんない。』
う腐腐。初々しいでしょ。当時まだ6歳だったのよ。
「今のあなたと同じ。」
……それは初々しいと呼べるのか?
懐かしいわ。Aに怒っているのはあの人なのに、最後に泣いているのはあの人の方なんだから。
「へぇー。A兄ちゃんのお父さんって立派な人だったんだね!」
「……そうね。立派というのがどういうものか分からないけど、」
最高の父親だった。
153人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イロハ(プロフ) - いろ#病み兎さん» 読んでいただき本当にありがとうございます´`*そんな風に言って頂けて凄く嬉しいです。多少ひねくれててもいいんです!皆がみんな漫画の主人公みたいに生きれません!笑共感、ありがとうございます´ω`* (2020年12月8日 12時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
いろ#病み兎(プロフ) - コメント失礼します。俺のめっちゃ好みの作品でした。俺自身、多少ひねくれているところがあって、なんとなく共感。話の内容から文章まで全部好きです。もう少し早く読みたかったなぁ… (2020年12月7日 23時) (レス) id: eab5cadf24 (このIDを非表示/違反報告)
イロハ(プロフ) - いちごミルクさん» ありのままを受け入れてくれてありがとうございます^^*大好き。 (2020年7月22日 18時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
イロハ(プロフ) - トアさん» 全然失礼ちゃう!どんどんして笑爆走します。風のように。コメントありがとうございます^^* (2020年7月22日 18時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
イロハ(プロフ) - なゆさん» めっちゃ嬉しい!ありがとうございます^^*頑張る!更新!!楽しいありがとう!! (2020年7月22日 18時) (レス) id: b47f502e49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:イロハ | 作成日時:2020年7月2日 8時